嵐を呼ぶ女 谷村さんが行く❹ その⑺

嵐を呼ぶ女 谷村さんが行く❹ その⑺

 

 


*現実の方々とは無関係のフィクションの世界です。

*本文の無断複製・転載等行為を禁じます。

*パラレルにパラレルを上乗せしたお話になるので、お好きな方はどうぞよろしくお付き合いくださいませ。

 

 

 

 タクシーで到着した先は会社の正面玄関付近ではなく、会社から徒歩3分くらいの場所にあるサンマル◯カフェの前だった。

 そういえば朝食を食べていなかったことを思い出し、わたしを先に降ろした戸田さんがタクシーの精算を済ませると店内に入って行き、朝ご飯のパンを選びコーヒーと一緒にお持ち帰りで購入した。

 

 会社までの並木道を戸田さんと並んで歩く。

 戸田さんは片手でスマホを手早くチェックしていて、カフェで購入した袋を二つ持っているもう片方の手が気になり尋ねてみた。


「二袋分も購入されたのはお昼ご飯用ですか?」

「あーこれ?お腹を空かせてムスッと不機嫌で出勤するのが予想できるあの子の分ね」

「ああ、そうだった…どうしよう、朝から憂鬱すぎてお腹がぐーぐー言ってますよ…」

「いや、それはお腹空いてるだけでしょ」

 

 鋭いツッコミを入れるのはさすが関西人だ。

 タクシーの中では戸田さんが何を考えているのか分からなかったが、谷村さんが空腹でやって来ることを予想して考えてあげていたのだと分かった。

 

「正面玄関に到着しましたが、吉岡(入れ替わった谷村さん)の姿はまだありませんね」

「まだ少し早めの時間だから、ここでコーヒー飲んで待ってようか」

「はい。そういえば、ここで立ってると挨拶運動の人達みたいに見えそうですよね」

「確かに…おっ早速一人来た来た〜おはようまなみ、いつもこの時間なん?」

「んにゃ、おはよう〜恵梨香と美月ちゃん! 今日はちょっくら早出して採用選考の人事部内の会議があるんだよねぇ」

「おはようございます比嘉さん、早出お疲れ様です」

「お疲れさん、はい、飴ちゃんあげる」

「関西のおばちゃんか!」

「まだまだピチピチのギャルに何言うてんの?」

「もうお互いにそういう年齢はとっくに過ぎてますがな。ねーっ美月ちゃん」

「あははっ、お二人の掛け合いに笑ってしまいますよ」

 

 最初にやって来た比嘉さんに気を良くした戸田さんは朝からボケを飛ばしてくれたので、わたしと比嘉さんは二人で顔を見合わせて笑った。

 比嘉さんがエントランスに入って行くのを見送り、その次にやって来たのは谷村さんの同期の大政さんだ。

 谷村さんが大政さんを何とお呼びしているか不明ですが、同期っぽく振る舞わなくてはと気を引き締めるが…

 

「わぁあ、みっちゃんおはよう♡」

 

大政さんはわたしが返事をする前に突撃する勢いで抱きついて来た為、手に持っているホットカフェオレを危うく落としてしまいそうになる。

 

「ヒェッ大政さん…フオオッ顔も近っ!?」

「朝からみっちゃんに逢えるなんて赤い糸で結ばれているくらい運命的だね、結婚しよっか!」

「け、結婚ですか?! …そんなまだ出会ってから間も無い二人ですし…ぁぅぅ」

「もしもーし、アヤマサちゃんにも飴ちゃんあげるから早く早急に美月ちゃんから離れてな」

「ありゃ、戸田さんもいらしてたんですね、おはようございます」

 

 大政さんから引き離してくれた戸田さんは恐いくらいの笑みを浮かべて大政さんを牽制しているのですが、それを受けても大政さんは全く我関せずな様子でわたし(谷村さん)の頬にチュッとキスを落として、手を振りながら颯爽と歩いて会社へと入って行ってしまう。

 

「…ほんまに毎度毎度なんやねんあの子…朝からマジムカつくわ…」

「頬キスが谷村さんとの日常的な挨拶なんですね…驚きました」

「非日常的! 絶対に隙見せたらあかん子やから、大政さんとの接触は最大級に注意してな、分かった?」

「ラ、ラジャーであります…!」

 

 ついさっきまで比嘉さんに会えてテンション最高潮で楽しそうにボケていたのに、大政さんに出会ったが最後、戸田さんのテンションはガタ落ちで殺気立つオーラが見えるほどお怒りなのが隣のわたしにも伝わり、その怒りを鎮めることが出来るであろう谷村さんの早急な到着を祈るように待ち始めたのである。

 

(早く来ないで欲しいけど出来れば早く来てください…早く来ないで早く来て…)