球場の売り子さんとして働く白緋冴の小話(その4) 後編

球場の売り子さんとして働く白緋冴の小話(その4) 後編

 

 


*野球観戦時の合間に書けたら載せるという、余裕がある時だけの(パラレル)白緋冴のSS。

*ここの白緋はすでにデキております。

*キャラクターがドラマの設定上から若干外れている為、すみませんと先にお詫びしておきます。

*クロスオーバーで、ミスシャーロックよりお二方登場します。

 

 

 

 冴島さんが目撃した方向に緋山さんも目で追ってみると、数人の人だかりに囲まれて球場のスタッフが慌てて駆け寄っている様子が見えた。

 

「当たった売り子ってまさかね…」

 

 冴島もよく観察していたよね、ってか目がよすぎじゃね!と内心思ってる緋山さん。

 状況的な判断で敢えて突っ込まずにいた。

 

「冴島さん、一緒に来て!」

「はい、お伴します」

「あっ、あたしも」

「緋山さんはわたし達の荷物を見てて!」

「はいよ…行ってらっしゃい」

 

 立ち上がって急いで座席から離れる二人を見送る緋山さんに、あなたは行かないの?という二つ隣からの視線を感じたのは気のせいではなかった。

 

「ファールボールの怪我に医師二人もいらないってことです…」

「あら〜、信頼してるのね」

「まあそうですね…あなたも行ってあげたらいかがですか? 彼女、安心すると思うので声をかけてあげてください」

 

 シャーロックはその言葉に何も言わずに瞳を閉じた。

 


 医務室に運ばれたのは冴島さんの目撃したとおりに売り子さんで、しかも自分達がビールを購入した和都さんだったのです。

 二人は医師と看護師である旨を医療スタッフに伝えて、和都さんの診察と処置に当たる。

 

「和都さん、わたしの声が聞こえますか? ここがどこかわかりますかー?」

 

 白石さんが意識確認すると意識はしっかりとあるみたいで、小さな声で大丈夫、聞こえていますと返事があった。

 

「腕に痣が出来ているので応急処置は施しましたが、直撃ではないみたいですが頭部にも当たっている外傷が見られるので、病院で検査を受けることをお勧めします」

「…わかりました…あの、お仕事に戻ってもよろしいでしょうか?」

「もう少し休んでください、仕事中に倒れられると他の売り子さんにご迷惑をかけますから」

 

 前にも和都さんと同様のケースを売り子の同僚で経験した冴島さんは、ビシッと厳しい口調で和都さんを嗜めた。

 

「…はい、もうしばらく寝てます…」

 

 その時、コンコンッと医務室の扉をノックする音がして誰かが入室してきたようだ。

 

「あ、あなたは!?」

「なるほど、緋山さんの心遣いですかね…」

「シャーロック、もしかして心配して来てくれたの…?」

「あなたの同業者に言われたから来た、それだけよ…」

「もう大丈夫そうなので、白石先生行きますよ」

「えっ? …ああ、うんわかった」

 

 白石さんの手を引いて失礼しましたと言って冴島さんは足早に医務室から退出していく。

 二人を見送ったシャーロックは和都さんが寝かされている救護ベッドに近づき片膝をついて和都さんを見つめて小さな声で呟いた。

 

「…心配した…和都…」

「…シャーロック…ごめん…ありがとう…」

 


 球場の通路を並んで歩く二人。

 仕事中の冴島さんとは違った緩んだ表情でニコッと微笑む姿が白石さんは密かに好きだと思っていて、見つめ返して笑顔を向ける。

 

「あのお二人、上手くいくといいですね」

「うん、冴島さんもね」

「…わたしはまだまだ遠い人なので…」

 

 白石さんは冴島さんを勇気付ける言葉を近くで掛けたくなり、冴島さんの肩に腕を回して自分の顔の側に引き寄せ…

 

「冴島さんの微笑む姿…わたしは好きだよ。だからきっとその人も振り向いてくれるはずだと思うよ」

 

 冴島さんは、ドキドキさせるあなたが悪いんですよ…と甘く囁き、白石さんの頬に柔らかい唇で触れ、スッと離れた冴島さんの笑顔に心が撃ち抜かれてしまったのか、顔を真っ赤に沸騰させて慌てふためく白石さんはその場からしばらく動けなくなり、席に戻れた時すでに遅しで白石さんのみ緋山さんの怒りの鉄拳を食らうというオチが付くのでした。

 


次回の野球観戦時に続く…