珍しい二組のオフィスラブ詰め合わせ

珍しい二組のオフィスラブ詰め合わせ

 


*現実の方々とは無関係のフィクションの世界です。

*本文の無断複製・転載等行為を禁じます。

 


クリーム塗って食べてあげる

(ひがとだ)


 隣立ってわたしの横顔を見つめる比嘉。

 

「ねぇ、舐めていい…?」

「ダメです…」

「美味しそうなんだもん…我慢出来ないよぉ…」

「ダメったらダメ…」

「えー、少しくらいいいじゃん」

「よくないの…」

 

 自分より二個上のお姉さんなのに、頬膨らませても可愛い年齢じゃないでしょ。

 

「いいもん、ソコにホイップクリーム塗ってイイコトしちゃうから♡」

「ハイハイ、早くスポンジにホイップクリーム塗ってください」

「恵梨香ちゃんノリ悪い〜、生クリーム塗って恵梨香を舐め舐めしちゃうもん」

「あんたねえ、食品で卑猥なコトしようとしてんじゃないわよ」

「ウフッ、えっちな恵梨香ちゃんだねぇ」

「あんたの方がエロくてスケベやないの」

「わたしはただ、恵梨香の頬にクリーム塗ってペロリと味見したいだけだよ…」

「あっ、こら、あかんって!」

「スプーンで掬って指先に付けて…おっとすべった!」

「むわっ、やめなさいよっ」

「あーっ恵梨香のほっぺにクリームが付いてるよ!」

 

 滑ったフリして生クリームを頬に付けて誘ってくるから、こちらも一歩も引かない。

 

「早よ取って…」

「え、舐めてもいいの?」

「何でもええから早よして…」

 

 ほっぺを舐められたいわけではないんだ。

 比嘉がシたがるから早く落ち着いてほしいだけ。

 

「え、なになに〜耳まで真っ赤にして可愛いやつじゃん」

「うるさいなぁ…気が変わる前に早くしなさいよ」

「恵梨香…そういうところも好きよ…ちゅっ、ペロッ、ンン〜っ…」

「んっ…まなみぃ…首筋は…舐めちゃだめ…」

「むわ〜この声ムラムラしちゃう…恵梨香食べてもいい?」

「恵梨香はおあずけ」

「少しだけ…じゃあさ、ぱいだけ頂戴」

「はい、パイ皿一枚お待ち!」

「そのパイじゃなくてさ、ねっ、ね〜」

 

 わたしの背中に抱きついてワンコみたいに尻尾ブンブン振ってる比嘉は可愛いと思う。

 

「このケーキ仕上げて同期会に持って行くのが先」

「いやだイヤイヤ〜、それ、すぐに帰って来られないやつじゃん」

「メンバーはガッちゃんと由里子ちゃん中心やし、まなみーも来たらええよ」

「ええー、同期会なのに悪いし…」

「お酒たくさんあるって」

「お酒!? ほらほら恵梨香、ケーキ仕上げて飲みに行くぞー!」

 

 花より団子じゃなくて、菓子よりお酒、比嘉らしくてクスッと笑いながら生クリームをスポンジに塗って仕上げたのでした。

 

 

その悩みを解決するには

(みつりほ)


「うーん…」

「悩ましい声出してどうしたの?」

「あ、すみません…なんでもないです」

「ふーん、なんでもないの?」

「はい…いえ、ないです…はい…」

 

 休憩室に入ると思ったより混雑していて、偶々空いていた彼女の隣に座って缶コーヒーを飲んでいたら、突然悩ましい声が聞こえて来たら気になってしまうのは反射的なものか、それとも違う感情が芽生えているのかどちらだろう…

 

「仕事の悩みだったらアドバイスしてあげられるけど」

「うーん…悩み事が仕事以外なので…話しづらいと言いますか…」

「ああ、なるほど…プライベートの事なら波瑠ちゃんか比嘉さん辺りが話しやすくていいと思うよ」

 

 わたしがそう言うと、彼女は眉毛をしょんぼりと下げて、何故か落ち込んでしまった。

 何か答えを間違えてしまったのか、慌てて違う答えを頭の中で模索するが思い当たらなくて困ってしまう。

 

「わたしの悩みは谷村さんには話せないです…」

「そう…わたしじゃ役不足だってことよね…」

「そ、それは違います!」

 

 休憩室内に響く大きさの声を出す吉岡さんの口に片手を被せて急いで塞いだ。

 

「吉岡さん! 人多いからボリューム下げて」

「ふが…もがもが…」

「どうしてわたしじゃダメなの? 怖い先輩だから…?」

「もがもが…ぶわっ、ハァハァふぅ〜」

「ごめんごめん、ちょっと塞ぎすぎたわ」

「いえ、大丈夫です。今の谷村さんは怖くないですよ」

 

 ニコッと笑った吉岡さんにドキッと胸が跳ねた。

 何で吉岡さんの笑顔に動揺してるのか自分でもよくわからない。

 

「怖くないならどうして?」

 

 ここでは話せないので場所を移しましょうと言った吉岡さんに着いて行ったら、そのフロアの階段の踊り場に辿り着いた。

 

「こんなところに連れて来てしまってすみません…」

「後輩と二人きりで階段の踊り場…雰囲気的には喧嘩を売りたいとかじゃないよね」

「あなたにだけは、喧嘩なんて売りませんよ」

「まあそうやろな」

 

 吉岡さんは俯きかげんで恥ずかしそうにわたしの腰付近の服の袖を掴んできた。

 

「えっ? 吉岡さんどうしたの…ぁ…ンンッ…!」

「あなたのことが好きになったので…どうしたらいいのか悩んでるんです…ごめんなさ…ッン」

 

 もうこれ以上は謝らせないと思った途端にその柔らかな唇を塞いでいた。

 

「…一人で悩むくらいなら、本気で落としに来てもええよ…」

「わたしが迫ってもいいんですか?!」

「先にキスしてきたのはそっちでしょ、だからうちもそうしたくてお返ししたんよ」

 

 顔を真っ赤にして動揺で慌てふためくのは、どちらかといえばいきなりキスされたわたしの方なんだけど、先輩なので心を落ち着かせようとその場で両足を踏みしめた。

 

「わたしは、谷村さんのことが大好きです…どうかよろしくお願い致します」

「ありがとう、返事はこれからゆっくりとしていくね」

 

 吉岡さんの手を取り繋いで前を歩くわたしは、彼女をオフィスまで送り、次は晩御飯を食べに行く約束が出来たので、オフィスに戻ったら心と一緒に体も弾んでいた姿を同僚に見られてしまったのが自分にとっては唯一恥ずかしい事柄だったのである。