その出張、異議あり!in関西⑹ (パラレルオフィスラブ)

その出張、異議あり!in関西⑹ (パラレルオフィスラブ)

 

 

*本編から半年くらい前へと遡った内容になっています。

*現実の方々とは無関係のフィクションの世界です。

*本文の無断複製・転載等行為を禁じます。

 


 出張先の会社に到着してからは天海さんの鞄と上着持ちを任され、時間刻みのスケジュールを管理しているわたしは天海さんの秘書として同行させられているのではないかと薄々思い始めていた。

 しかも、昨日に続き縁談の話をいくつも持ち込んでくるから、ストレスレベルがどんどん上がっているのに、はっきりと無理です、どなたもお断りしますと言えないのがどんだけ苦痛かこの上役の人達は微塵も分からないのだろうと思うと眉間のあたりからビリビリと痛んだ。

 

 何とかのらりくらりと交わし、昼食の後、天海さんはわたしに鞄だけを持たせて会議が終わるまでこの階のベンチにでも座って休憩していていいからと言って、初めて別行動となった。


「あ、メッセージ来てる…わあい、トッティーからだ!」

 

 昼食前に今日はどこの会社に出張してる?と聞かれたので、近隣の観光スポットと社名だけを教えてあげた後は返信が見られず、今ちょうど確認すると意味深な内容が書かれていた。

 

『そっか〜、分かったありがとう。

うちもその周辺でぶらぶらしたいわ。

久々になんば辺りのたこ焼きも食べたいし、青のりは歯に着くから無しでいいよね』

 

 そんなに関西に帰省したかったのかと伝わってくる文面に、青のり無しのたこ焼きをお土産にしたら喜ぶのかなと思って返事を書こうとしたその時、この会社の男性社員に声を掛けられてパッと顔を上げたら見覚えのある運転手がすぐ近くに見えて、ベンチに座っているわたしは咄嗟に体を一歩横に引いた。

 

「こんにちは、新垣さん」

「あっ、あなたは昨日の運転手の…」

「よかった、私のこと覚えててくれたんですね。またお会いできて嬉しいですわ〜今お一人なんですか?」

 

 調子が良さそうな喋り方と、妙に作った笑顔が印象的でそれが記憶に残っているだけの運転手だ。

 

「え、と…上司が会議中なので、こちらで待機しているだけです」

「そうですか、よかったら社内の喫茶ルームにでもご案内しますが、空き時間はありますか?」

 

 いい人そうな笑顔の下には何を考えているのか大方予想はつくけれど、どうやって受け流すかが悩みどころか…

 

「いえ、いつ終わるのか伺っていないので、入れ違いにならないようにここで待機しておきます」

「まあまあ、少しくらいなら時間オーバーしても大丈夫ですって、美味しいケーキもありますから…」

「行きたくないので、ごめんなさい…ぁぁ!?」

 

 その人に腕を掴まれたわたしは、無理矢理立たされて引っ張られてしまう。

 

「少しくらいええやないですか」

「痛いっ、やめてください! 行きたくないと言うのに、あなた何なんですか!!」

「気の強そうなところも可愛い子やな、お茶するくらいええでしょ」

「イヤです! 離してください…ィャ…だれか…」

 

 誰もいない静まり返った廊下の端にあるベンチで騒いでも誰も助けを呼べない状況に恐怖を感じて、体が固まり震えて声が段々と小さくなっていく。

 

(こんな無理に従わせようとする人は絶対嫌…お願い…誰か助けて…)

 

 願いが通じたのか偶然だったのか、少しずつ引きずられていくわたしの元に、奇跡的に救世主が現れたのだ。

 

「新垣さん見っけた。ここに居ったんや! ぐるぐる探し回ったんやで」

「…ぁ…とってぃ…なんで…」

「あんた誰や? ここの従業員ちゃうんやったら通報しないとやねぇ」

「はあ?? 無理矢理女の子拉致ろうとしてる下心丸出しのあんたの方が、どう考えても強制わいせつ目的で通報もんやろ」

 

 眉間にシワを寄せて運転手と対峙する戸田が、腕を組んで壁に寄りかかっているのが見える。

 

「ふんっ、連れのあんたを建造物侵入罪で通報して問題になったら彼女の会社に迷惑かけるっていい子だったら分かるよね〜」

 

 会社絡みにして脅そうとする考え方とその口調が非常に気持ち悪いと言ってやりたいが、恐怖心から一言も声が出せなかった。

 

「…ふーん…最近こっち帰ってこれへんかったし腕が鈍ってるからどうしよかなぁ…」

 

手を合わせて組んで指をポキポキと鳴らして戸田がこちらに近づいてくる。