あなたへのお届け物は直行便にて (前編)

あなたへのお届け物は直行便にて (前編)

(tdmt)

 


*現実の方々とは無関係のフィクションの世界です。

*本文の無断複製・転載等行為を禁じます。

*昨日に続いて最推しカプの話になります。

 

 

 お仕事上がりで帰宅すると当たり前だけどいつも一人、もう何年も変わらない生活をしているから慣れている反面、寂しさを埋めるには一人ではどうしようも出来なくて、思っているより脆い部分が多いわたしは、あなたに逢いたい気持ちが募るばかりだ。

 

 逢いたくて…

 今すぐにでも逢いたくて…

 わたしは今日もメッセージをポチッと送る。


 えりかさんお疲れ様です。

 大好きなあなたに今すぐ逢いたい…

 寝る前に声だけでも少し聞けると嬉しいです。

 

 

 まだ寝ていなければいいなと思って期待したり、疲れているなら早めに休んで欲しいと考えたりもして、揺れる思いは大事な人に恋をしている証。


 明日は久々にオフだし好物の日本酒を飲もうと早々と決めて、食材を買いにスーパーに立ち寄ったら恋しく想うあなたからの返信が届いた。


 みっちゃんお疲れ〜!

 筑前煮作ってそっちにすぐ届くからよろしく。

 


 大変、お家に帰ったら不在連絡票を確認しなければいけない。

 早く帰って明日中に再配達をしてもらう依頼をしなければと、お酒のあてに刺身の盛り合わせとアボカド入りのコブサラダを手早く購入し、マンションへと足取り軽めに帰宅した。

 


 あれ? ピザ屋のチラシしか入ってないような。

 恵梨香さんの手作り筑前煮の不在連絡票はどこだ〜?

 ポストを何度確認しても通知の紙が入っていない。

 まだ届いていないのだろうかとしょんぼりして玄関のドアを開けると、玄関からキッチンへと続く廊下の先まで明るく電気がついており、足元に目を向けて見覚えのあるヒールが揃えてあるのが分かった途端、わたしはシューズを脱ぎ捨てて、その人の元へ駆け出していた。

 


「えりかさん、えりかさんっ!!」

「おおっ、みつきちゃんお帰り〜めっちゃ早かったやん」

 

 その細身の体へとダイブする勢いで抱きつき、彼女の懐に収まる。

 

筑前煮のお届けもの…」

「帰宅して名前を呼んだその次が筑前煮って、ぷっ! ほんまおもろい子やな」

「ぅぅ…不在連絡票入ってなかった…」

「在宅連絡票でも入れとけばよかったかも…気がつかんでごめんな…」

「ううん、ええんよ。本人確認をお願いします…」

「もちろんええよ、こっち向いてくれる…?」

 

 顎をくいっと指で持ち上げる仕草が俳優顔負けにイケメンでカッコイイのは、わたししか知らない彼女の自慢の素敵ポイントだろう。

 

「…今日のリップのカラー、ええ色選んでもらったんやね…」

「谷村さんに合う色だってメイクさんが選んでくれたんですよ…」

「似合ってるよ…キスするのがもったいないな…ンッ…」

 

 唇を合わせて彼女と自分がここに居るのは現実なんだと、交わっている唇から互いに伝えながら、彼女の本人確認を十分に終えたのである。

 

「…んっ…ふわぁっ…ふぅ、恵梨香さんの唇紋頂きました」

「ハハッ! 唇紋ってウケるわ〜」

「指紋よりも色味は良いですもんね」

「どちらかといえば美月ちゃんの色が付いてる気がするけどな…ちゅっ…」

「恵梨香さんも似合ってるよ、ちゅっ…晩御飯もう食べました?」

「うん、こっち来る新幹線の中で牛タン駅弁を食べたよ、ちゅっ…美月ちゃんは?」

「マネージャーと軽く済ませて来たので…ちゅっ…って、そろそろ部屋着に着替えて来ますね」

 

 会話中のキスは、前回最後に交わってからこっちに帰宅した翌日からの逢えない日数分は絶対にしようと決めているのだ。

 わたしが寝室に入って着替えている間に晩酌の準備を進めてくれるのは、さすが付き合ってきた分だけ理解がある彼女の心遣いに感謝し、洗面所で手洗いうがいを済ませてソファーへと急ぎ足で戻った。

 

「そこのお姉さん、お高そうなええ日本酒があるじゃないの〜」

「先日、両親が旅行の土産に買って送ってくれたんですよ」

「美月ちゃんパパとママありがとうございます! うちも飲もうっと」

「おちょこにお注ぎしますね」

「おっとと、みっちゃんもどうぞ」

「ありがとうございます」

 

 開けた日本酒をおちょこに注ぎ合って乾杯し、ぐびっと一息で飲み干した。