膝枕はわたしの特等席

膝枕はわたしの特等席

(とだみつ)

 


*現実の方々とは無関係のフィクションの世界です。

*本文の無断複製・転載等行為を禁じます。

 


 お仕事上がりで約束した場所で落ち合うと、彼女と一緒に帰宅し晩御飯を食べたら寛ぎモード、一番リラックスできる時間だ。

 ソファーの上で寝込んで枕は彼女の太もも。

 髪をふわふわ撫でてくれる指の動きとテンポが心地よい。

 

「ビールかチューハイでも持ってきますか?」

「んー、そうね〜…」

「柿ピーとさきいかと晩御飯に残ったやみつき無限アボカドがありますよ」

「ぷふっ」

「なんで笑うんですか?」

「それさ、ただ単に、やみつき無限アボカドが食べたいんでしょう?」

「それは…好きなんで…」

 

 内容なんて入っていないだろうドラマに目を向けて、口をむにゅっと尖らせて誤魔化そうとしてる顔に笑みが溢れた。

 

「ふふっ、わたしも好きだよ」

「アボカドがですか?」

「アボカドをふっくら膨らませたサイズのこの胸かなぁ…」

「ええ〜、ビール取ってきますね」

「んん〜、よいしょっ」

 

 頭を浮かせて大好きな太ももと暫しのお別れ。

キッチンでゴソゴソしてバタンと冷蔵庫が閉まる音と同時に「んぎゃっ痛っ!」と悲鳴に近い痛みを知らせる声が聞こえて、ソファーからガバッと体を起こして声を掛けた。

 

「どうしたん? 美月ちゃん大丈夫?」

「あうぅぅ…冷蔵庫で指をはさんでしまいました…」

「んしょっ。どれどれ、お姉さんに見せてみ」

 

キッチンに入って彼女の指を一緒に確認する。

 

「あちゃー、痛そうやな…自分で指曲げられる?」

「だいじょうぶ…動かせます」

「ほんなら、軽くアイシングしようか」

「これくらいだったら舐めとけば治りますよ」

「舐めて欲しいの?」

 

 いたずらっ子の笑顔で尋ねると、べつにいいですからと照れが混じった様子でアイシングの準備を始めた。

 

「舐めとけば治るのに、言われたとおりにアイシングするんだ〜、みつきちゃんは良い子だねぇ」

「お姉さんの言うことを真面目に聞いとく方がいいと思ったんで」

「はいはい、恵梨香お姉さんはビールとさきいかとアボカド持っていくわね」

 

 アイシングを終えた彼女はソファーの定位置に座り、わたしは再び太ももに頭を乗せて彼女の顔を下から眺めた。

 

「その格好だとビール飲めませんよ」

「んー、飲ませて…」

「口移しでですか?」

「できるの?」

「できますが、たぶん美味しくないですよ」

「それはしてみないとわからへんよ」

 

 ビールを口に含んだ彼女にわたしは体を持ち上げて唇を塞ぎ、口移しで液体を分け合ってお互いにごくんっと飲み込んだ。

 飲み込んで無くなった後も舌で舐め取って啄ばむように口付けてから、顔をそっと離す。

 

「ビール…美味しい?」

「うーん、えりかさんのお口の味しかしませんでした」

「わたし…美味しい?」

「はいっ、とても美味しいですよ」

「そういう時だけ正直になんのどうにかしてよ〜」

 

 照れ隠しに髪をポンポンとタッチしたりくしゃくしゃしていると、髪型が乱れるからやめてくださいと笑いながら抗議する彼女とひとしきり戯れ合う。

 戯れ合いを止めて、ぴったりくっつき合ってビールを飲んでアボカドをパクリと食べてテレビに意識を向ける。

 今流れているドラマの中の女性二人組も、仕事上がりでビールを飲んで寛いでいる姿が偶然にも自分達と被っており、思わず彼女の肩をぽふぽふ叩きながら爆笑してしまう。

 

「ぷっ、ヒャハハハッ! この二人うちらと同じことしてるやん、あ〜可笑しい〜」

「なんだろう、この二人、恵梨香さんと新垣さんにめっちゃ似てませんか?」

「あはははっ、似てる似てる!でも、うちの方が美人やし、ばり可愛いと思わん?」

 

 テレビの中のゆるいウェーブが掛かった髪型の女性とわたしをじっくりと見比べる彼女。

 スプーンでアボカドを掬いもぐっと食べてビールを飲み、わたしの服の袖をいじいじと触って何か言いたそうだが、突然ぎゅっと抱きついてきたので、わたしは驚きながらも背中に腕を回して包み込んであげた。

 

「…あの一つくくりの女性にはあげたくないんで…」

「あ、そっちの方が気になったんだ…」

「恵梨香さんの方が美人やし、ばり可愛いから心配になるもん…時々…少し…」

「妬いてくれる美月ちゃんも大好きだし、愛してるよ」

 

 ドラマの内容なんて全く入ってこないのは、彼女のことしか考えられないからだと思い、ソファーに柔らかなその身を押し倒して唇を合わせ、絶対離さないから離れないでと彼女の耳元で囁くと、甘さが含んだ声色で「わたしもえりかさんを愛しています」と囁き返してくれた。