とだくんとあらがきくん (その5)

とだくんとあらがきくん (その5)

 


*現実の方々とは無関係のフィクションの世界です。

*本文の無断複製・転載等行為を禁じます。

**主要人物はほぼ全員男体化の作品になっておりますので、苦手な方には先にお詫びしておきます。

*谷村くんの位置付けをどうしようか長く迷ったのもあり、約4カ月ぶりの続きになります。

 

 

 顔色がよくないので少し座ってお喋りしませんか?と提案され、心配されているのを無下には出来ず彼に背中を支えられて休憩室のソファーに横並びで座った。

 

「お水かお茶のどちらか飲まれますか?」

「う〜ん…ジュウロク茶があれば…」

「待ってください…ありました〜買いますね」

 

 自販機で僕がいつも愛飲しているお茶を購入した谷村くんは隣に戻って腰掛けると「はいどうぞ」と言って手渡してくれた。

 

「お金払わないと、あ! お財布オフィスに置いたままだった…」

「いいですいいです、お財布に小銭が溜まってて重かったので少し軽くなってよかったです♪」

 

 谷村くんはロイヤルミルクティーの缶の蓋を開けゴクゴク美味しそうに飲んでる姿を見ると、自分も急に喉が渇いてきたので蓋を開けてゴクゴクッと二口飲んだ。

 

「美味しい、奢りありがとね」

「どういたしまして。最近は体についた脂肪を減らすお茶がどんどん出回ってますよね」

「日本人のお茶文化を上手く生かした良い商売だなって思ってる」

「そうですね、そのジュウロク茶の製品もありますよ」

「うん、それを時々デスクで飲んでると、トッティーから『ガッちゃん全然脂肪付いてないやん!』と言われながら入念にお腹周りのチェックされたりしてる」

「あははっ、えりかさんだったら戯れついてやってそうなのが目に浮かびますね」

 

 戸田くんの話に屈託無く笑う谷村くんは、楽しそうでいい感じですね、と笑顔のまま話す。

 彼はいつも気難しい顔で束になって纏められた資料を読みながら社内を忙しそうに駆け回っている姿が印象に残ってるためか、柔らかな笑顔を間近で見たのは初めてで、ライバル的存在なのに不覚にも可愛いと思ってしまった。

 

「あの、具合が悪くないとしたら、何か悩み事でもあるのですか?」

 

 突然核心を突いたような質問をされて、頭を抱えたくなってしまう。

 君と戸田くんの関係が気になっているんだなんて軽々しく聞けるわけがないと、適当に嘘でもつこうかと暫し考えていると申し訳なさそうな谷村くんの声にハッとなった。

 

「すみません、馴染みのない後輩なのに不躾な質問をしてしまい申し訳ありません…」

「あ、えっと…いいんだよ、謝るようなことじゃないから」

「ごめんなさい…上司や先輩との距離がなかなか掴めなくて、入社した後半年くらい人付き合いが上手くいかなかった中で唯一気さくに声を掛けてもらえたのが、直属の上司とえりかさんだけだったんです…」

「ああ、関西人のノリもあって確かに気さくな奴だよね」

「はい、ですからえりかさんは尊敬して慕うお兄ちゃんみたいな人なんですよ」

 

 お、お兄ちゃんみたいな人だってーーーっ?!!

 えっ?二人は恋人同士の関係じゃないの?

 戸田くん谷村くんのオフショット写真立てにチュッとしたり、デレデレ眺めたりしてるんですけど、あれは一体何なんだ〜〜??

 

「おっ、おお…お兄ちゃんみたいな人なの?」

「はいそうですよ。先輩というよりも気楽に戯れ合えて優しくてとっても可愛いお兄ちゃんだと私は思っています」

 

 もしかして戸田くんも谷村くんのことを可愛い弟だと思っていて、それがバレるのが嫌で写真立てを大事に抱えて隠したとか…?

 しかし、呟いていた言葉の数々を思い出したら、弟というよりも恋をしているようなニュアンスもあった気がするし…

 二人の距離がイマイチ掴めなくて困惑している。

 

「あのさ、一つ谷村くんにちょっとだけ答えにくいことを聞いてもいい?」

「はい、なんでしょう?」

 

 何を聞かれるのか少しだけ緊張した面持ちをしているのが目に見て取れる。

 

「谷村くんと戸田くんは…その…えーっと…うぅぅ…聞きにくいよぉ…」

「もしかして、私とえりかさんの関係を尋ねているのですか?」

「はい、そうでござる…」

「あははっ、ござるは面白いな!じゃなくて、私は先程話したようにお兄ちゃんみたいな存在だと思って時々お家に遊びに行かせてもらっていますね」

 

 嬉しそうにはにかみながら話す彼が嘘をついてる素振りもなく、こちらの方が悩み事を聞かれた時、適当に嘘をついて誤魔化そうとしたことがとても恥ずかしく思ってしまい、戸田くんに似て正直で真っ直ぐな谷村くんに対する好感度が上がるとは夢にも思わなかったのである。