その出張、異議あり!in関西⑶ (パラレルオフィスラブ)

その出張、異議あり!in関西⑶ (パラレルオフィスラブ)

 

 

*本編から半年くらい前へと遡った内容になっています。

*現実の方々とは無関係のフィクションの世界です。

*本文の無断複製・転載等行為を禁じます。

 


 『結衣を泣かせた恵梨香にはもう遠慮しないって決めたから、これからはわたしが一番隣で見つめて支える。だから結衣と一緒にいたい』

 

 比嘉が懸命に伝えてくれた言葉を思い出したわたしは、言い澱みながらも大事に言葉を選んで話し始めたのだった。


「わたしは戸田を一番大事に想うのと同じくらい大事な人がいます…一番好きと言っていいのか悩みますが、その人の存在がわたしにとっては不可欠であるとはっきりと言えます」

「なるほど…愛が友に勝る相手かどうか、その二人共にまだ判断がつけられていない、というわけか…」

「はい…二人共自分にとって一番傍にいて欲しい相手だと思っているので…大変欲張りで自分勝手ですよね…」

「そんなことはないとは言えないけど、人の気持ちなんて欲張りで自分勝手なもので半分くらいは構成されてるとは思っているわ、恵梨香もわたしも例外なく同類よ」

 

 天海さんは人の気持ちについて淡々と語ってはいるが、心の奥深くは愛する相手への想いで溢れているのだろう。

 

「そう考えても、戸田がわたしに向ける気持ちや感情は真意が分かりかねています…」

「うんうん、恋人の目の前で堂々と親友の唇を奪うとかホントよく分からないよねー」

 

 あの時の天海さんは嫌悪感を表に出したり拒絶的な反応を見せることはなく、戸田に対してあなた最高に面白い子ねと言ったのだ。

 それは、キスの一つや二つしようが戸田はわたしに奪われる事がないという確信か自信があるのか、それとも自分を本気にさせてくれる相手に出逢えた喜びが溢れていて突拍子もないことをしでかす彼女の愉快さから面白いと言ったのか、これも気になっている部分ではある…


「ただ、恵梨香がわたし(恋人)が居るにもかかわらず、あなた(一番傍にいる親友)を誰にも渡したくないと拗れたような独占欲を露わにするのは恐らく…」

「恐らく何ですか?」

「あの子が手離したくないと心底から思っていたのに、大事にしてた者の手が離してしまった過去のトラウマみたいなモノがあるんじゃないかって…あの子の寝言を聞いてずっと考えていたの…」

「手離したくない気持ちも親友への歪な独占欲であって、わたしのことを恋愛対象で見ているのかどうかは分かりませんよね?」

「ま、壁に押し付けて奪うようなキスするくらいだから愛情は十分にあるとは思うよ」

 

 親友に向ける愛情は恋というイコールではない…

 特別な相手に向ける愛情こそ恋といえるのではないのか…?

 じゃあわたしの特別な存在(相手)は…

 

「それじゃあさぁ、ここで新垣の唇を奪ったら、わたしに恋してくれる…?」

「えっ…何を言ってるんですか?!」

 

 ベッドの縁から立ち上がった天海さんに両肩を掴まれて真剣な瞳でわたしの瞳を見つめている。

 唇を奪われたら恋をしてしまうくらい寂しくて、寄り添って欲しいくらい愛情に飢えているの?

 いや、違う。

 好きじゃないとキスなんて出来ない。

 あの時、嫌悪感を表に出すこともなく、拒絶的な反応をしなかったのはどちらかといえばわたしの方だろう…

 

 戸田とキスができて本心は嬉しかったんだと、今になって好きだと思う感情が疼くように再び湧き上がってきたのだった。