その出張、異議あり!in関西 (パラレルオフィスラブ)

その出張、異議あり!in関西 (パラレルオフィスラブ)

 

 

*本編から半年くらい前へと遡った内容になっています。

*現実の方々とは無関係のフィクションの世界です。

*本文の無断複製・転載等行為を禁じます。

 

 


 新幹線が主要駅に到着しOsaka Stationへ移動後、取引先のお迎えの車に乗車して会社へと向かって行く。

 さすがは部長さんともなると手厚いもてなしを受けるのだと思いながら、ヒラ社員のわたしは同行補佐として緊張しながら助手席で縮こまっていた。

 

「君は新垣さんやったね、結構緊張してます?」

 運転手の男性社員らしき人物が話し掛けてきている。

「えっと、まあ、少ししていますが…」

「まあこっち来たら関西弁で慣れない思うけど、リラックスして大丈夫やからね」

 戸田が年中関西弁で話し掛けてくれるから寧ろ慣れてるんですけど…なんて、普段から聞き慣れていると返事しようか考えていると、天海さんが後部座席から助け船を出してくれた。

「その子の一番の親友が関西弁バリバリの子で慣れてるから平気なのよ。それよりも安全運転だけ心掛けていなさい」

 少々不機嫌さが混じる声色の天海さんだと感じ、運転手の男性に対して牽制してくれている様子で安心できるのだった。

 

 会社に到着し、挨拶から始まりお互いの提携業務の進捗確認や業務の通達を交わしたりと緊張感の中話が進んでいった。

 天海部長と先方の上役との中の会話で自分が関わることが全くといって無く、どうして同行しているのか現時点では不明である。

 しかし、その疑問はすぐに解けることとなった。

 

 お昼の会食の席で男性社員が大勢詰め掛けて来た為、会食会場が一時的にわたしとのお見合いの会のようなものになってしまっていた。

 

「新垣さんのご趣味は…?」

「休日はゴロゴロして漫画を読むことです」

 俺もなんですよ気が合いますねと言われても、そうですかとしか言えない。

 次の方…

「好きな動物は?」

「爬虫のトカゲをペットで飼っています」

 何でデレッとしてるの?反応が微妙。

 次の方…

「お得意な料理は?」

「レシピを見ない物だとお味噌汁を…」

「僕に味噌汁を作ってくれませんか?」

 興味が無い人から食いついて来られても困るし…

 それと、家族とトッティーと愛未にしか作らないから。

「…あの、そろそろお時間なのですみません」

 失礼しますと言って席を立ち、天海さんが着席している背後に立ってお手洗いに行く了承を得てひとまず会場を後にした。

 

 トイレの洗面台で手を洗いタオルハンカチで手を拭き取り、鏡の前でリップクリームをひと塗りした。

 

(この状況は一体何なのよ…会社同士の都合もあるから、誰とも付き合う気はないとはっきりと言えないし、トッティーの心配事が当たっていたのかもしれないな…)

 

 自分の会社内とは違う状況下では自由が利かず、いつも自分の傍に居てこの人は苦手だと思う人を片っ端から上手に追い払ってくれている戸田の存在は、自分の中でも大きいのだと身に染みるように感じるから…

トッティー…早く隣に帰りたいよ…」

 その場でぽつりと呟くと、あなたとの距離が縮まるような気がした。

 

 午後からは一旦その会社から離れて未解決商事の関西支社へと入り、部長クラスの幹部や歓迎ムードで勝手に距離を縮めて来る者などと接することで精神的な疲労が蓄積していくのだった。

 そして、晩からは再び昼間の会社役員の方々の接待を受けての食事会へと参加し、うちの者の中で誰か気に入った人はいたか?やら、こちらさえ良かったお近づきになりたいやら、縁談の話が出てくると頭が痛くなり横に座る天海さんのフォロー無しではこの場所に居られないと悟り、そこから片時も離れずいる内に天海さんの気遣いと優しさを感じて、その日半日関わった誰よりも素敵な人だと思った。

 

 ホテルにチェックインしてようやく開放感を得られたが、上司と同室という状況なのでもう暫くは気を緩められずにいるのである。

 

「このホテルの最上階にスパがあるから行ってくるわね〜新垣は休んでからゆっくり行くといいわ」

「ありがとうございます。そうさせていただきます」

 客室内にある椅子に座るわたしの前に腰を曲げて顔を覗き込み頭を撫でてくれる天海さんに甘えることにしよう。

 

 天海さんがその場を離れたのを見てスマホのチェックをしていると、昼間隣に帰りたいと強く思った相手からの着信の通知が来て、慌てて通話ボタンを押した。

 

「もしもしトッティー?」

[おっガッちゃんお疲れ〜! 直ぐ出たからびっくりしたわ。体大丈夫? 仕事中ずっと心配しとったんよ」

「ありがとう、体は大丈夫だよ」

 

 疲れた心が落ち着けると安堵したわたしは、戸田との会話を楽しみ始めるのだった。