わたしの先輩が一番可愛い!

わたしの先輩が一番可愛い!

 


*本編の内容から外れた番外編の二カプの小話。

*現実の方々とは無関係のフィクションの世界です。

*本文の無断複製・転載等行為を禁じます。

 


(がきひが)

 

 現在、わたしと比嘉は社内のカフェにて3時のおやつを食べに来ていた。

 戸田は胃の調子が良くないと言って、胃薬とサプリメントを流し飲みしていたのが少し心配だ。

 

「いや、恵梨香は明らか昨日の晩御飯にステーキをバクバク調子乗って食べてたのが原因でしょ」

「確かに、普段小食なのに隣で見てた感じでも食べ過ぎてたもんね」

「天海さんの奢りだもん、めっちゃ食べな損やしなーー!とか言ってたし、ハハッ」

「さっき胃薬飲んでるトッティーに、調子乗って食べまくりで奢らせたバチが当たったのよって天海さんが呆れて話してたから、さすがにしょんぼりしてた」

 

 カフェに行くわたしを見送る戸田の楽しんでおいでと言った時のちょっぴり切なげな表情を思い出し、メニューをじっと見つめているわたしに明るい比嘉の声が届く。

 

「コレが今が旬の夏蜜柑シャーベットで、こっちが新たにメニューに入れてもらったプリンアラモードなの」

「へぇー、入れてもらったって愛未が頼んだの?」

「うん、このカフェの新作は毎回ほぼ一番乗りで食べに来てくださってる比嘉さんに何か希望があれば作ってあげるよ、とパティシエの店長が言ってくれたのよねー」

「それはすごいね。愛未は人事部で外界の交流も盛んで宣伝力があるからそれも兼ねてなんだろうねぇ」

「うふっ、もっと褒めて褒めて〜〜」

「愛未ってば尻尾ぶんぶん振ってるワンちゃんみたいだよ、可愛いねー」

「ありがとう結衣♪ 何食べようねー」

「愛未はシャーベットとプリンアラモードの両方とも食べたいんでしょ?」

「あ、バレた?」

「バレバレです。愛未は今食べたいと思ってる物をこっちに勧めてきたりするところがあるもんね」

「そっか、さすが結衣はよくわかってるなぁ…そういうところすごく大好きだよ」

 

 ふわっと笑って何の臆面もなく大好きだと言ってくれる比嘉に、わたしも正直になれたらいいのになと思うが、なかなか面と向かって言うのは恥ずかしいものがある。

 だから、精一杯の愛情が伝わるように行動で示すことにした。

 

「よしっ両方とも頼んで一緒に食べよう」

「えっいいの??結衣の食べたい物を選びなよ」

「わたしは愛未と同じ物が食べたいんだよ。食べさせ合ったらダメかな?」

 

 比嘉は瞳をキラキラさせて何度もダメじゃないと言って頷きながら、食べさせ合うの大歓迎〜♡とテンション高めに店員さんを呼んだ。

 

「一応わたしとトッティーの先輩なのに、愛未が一番可愛いのよね〜」

「一応じゃなくてれっきとした先輩なんです、えへんっ!」

 

 自慢気な表情の比嘉の頭に手を伸ばして一頻り撫でてあげると頬を緩ませたので、わたしは可愛い比嘉先輩ですねっと言い、揶揄うようにいたずらっ子な笑みを浮かべたのでした。

 


(はるみつ)

 

 仕事中の美月さんはキリッと真剣に開いた瞳が印象的でカッコ良く、時々横顔を眺めてしまうのはバレているのだろうか?

 

「波瑠ちゃん…何?」

「あ、すみません!特に何もなく美月さんを眺めてました」

「そう…今大事な案件を思考して書き進めているところだから、また後でお喋りしてくれる?」

「はい、邪魔して失礼しました」

 

 美月さんは口角をちょこっと上げて微笑むと、ありがとうと言って再び手元に顔を戻した。

 

(あ、ヤバイ…ここどうしたらいいんだっけ?)

 

 仕事で分からない部分があれば何でも気兼ねなく聞いていいよと言われていても、大事な案件を思考している美月さんに尋ねるのは躊躇いがある。

 頭に片手を添えてうーんうーんと唸っている声が聞こえてしまったのか、美月さんは面白そうにクスクス笑い、今度は椅子のキャスターを走らせてわたしのすぐ隣まで来てくれたのだった。

 

「も〜、波瑠ちゃんずっと唸ってんのおもろ過ぎやし、集中力切れてもたわ」

「ごめんなさい…分からない部分を今聞いちゃいけないと思ったら唸り声だけ漏れてました」

「ええんよ、何でも気兼ねなく聞いていいってうちから言うたんやし。それで、どこが分からへんの?」

 

 間近で覗き込む美月さんの顔が近すぎて、頬が自分の頬に当たりそうでドキドキしてしまう。

 

「…ぁぅ…そのう…美月さん何か近くないですか…?」

「ごめんごめん、もしかしてドキドキしちゃった?」

 

 ニンマリ顔でわたしの手元の用紙に目を通している美月さんは確信犯のような気がした。

 

「そりゃあしますよ……こことここなんですけど、どういう文章が適切なのか具体例を挙げて頂きたいのですが…」

「うちもドキドキしてる……そうだなぁ、わたしだったらこういう感じの文章を書くかな」

 

 体を密着させてペンを握る手に手を重ねて文字を書き進めていく美月さんの息遣いが耳元に届き、体がぶるりと敏感に震えて甘い痺れが背中を走っていくのがわかった。

 

「…ぁぁ…もう、ダメですよ…美月さんとキスしたくなるじゃないですか…」

「あっ、鈴木次長が戻ってきた!」

「えっ、あ……っ!?」

 

 わたしが正面に視線を向けた瞬間、美月さんの唇が頬にチュッと触れてから直ぐに手元に顔を戻して、何事もなかったように重ねた手を動かしてペンを走らせているだった。

 そのあと自分のデスクへ戻った美月さんは真剣な表情に戻ってしまい、頬にキスしてお終いなのが残念だと思っているわたしに嬉しい言葉が届いた。

 

「ほら、早く仕事終わらせて波瑠ちゃんの甘い口づけをちょうだい♡」

 

 片目を閉じてウインクしてきた美月さんは、わたしの一番可愛い先輩だと豪語してもいいと思いました。