オフィスラブキャラクターリレーSS⑤ (中編)

オフィスラブキャラクターリレーSS⑤ (中編) (戸田さん→[黒木さん経由]天海さん)

 


*現実の方々とは無関係のフィクションの世界です。

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 早速とデスクへと戻り本日分の業務を次長の元へと届けて、再びデスクで外回りの準備と机の整理をしていると、背面側のデスクで仕事をしている新垣がいつものようにオフィスチェアのキャスターをバックでツツッと走らせてやって来ると声を掛けてきた。

トッティー、いつもと違った口調で随分と渋ってたよね…何かあったの?」

「別に…いつもあんなもんでしょ」

 新垣に疑われたり心配されていようとも、今回だけは事情を話すこともないと考えている。

「そうかなぁ…噛み付き方が普段とは違うというか、何かこう仕事以上に大きな存在を抱えているような感じがして…」

「あのさぁ、人の詮索をするのも大概にしなさいよ」

 冷たく突き放すような言葉を何の躊躇いも無く投げてしまうのは同期の親友だからだろうか?

 彼女には包み隠さずに物を言ってしまってから後悔することが多々ある。

「わたしはトッティーのことが心配だから、何かあったら一緒に考えたいと思ってるんだよ」

「どうもありがとう、でも新垣が特別心配するような事は何も無いよ…」

「そう…それならいいんだけど…」

 デスク上の整理と外出の準備を終えて時計を確認すると、車を玄関先まで廻し終えるまでの残り時間が30分となった。

 

 美月ちゃんの看病の件をどうすべきか思考しもって手を動かしていたわたしは、安全に預けられて大事に扱ってくれるだけの信用度が最も高いあの子に頼るしかないと思い至った。

「あのさ、ガッちゃんにお願いがあるんだけど」

「んー、車の運転代行業務は遠慮しておくね」

「違うって、黒木さんのケータイ番号を教えて」

「黒木さんって華ちゃんのこと?」

「そうだよ、時間が無いから早くここにメモ書きして!ほらほら早急に手早く書いて!」

「もーう、急かさないでよ…はい、華ちゃんの番号これね」

「サンキュー! それじゃあ皆さんお疲れ様です、ほな行ってきます!」

 新垣にウインクして感謝を伝えたわたしは、総務部内の全体に届くようにお疲れ様の声掛けをしてオフィスを後にした。

 

 総務部より上階にある開発・調査部へと急ぎ足で向かい、透明なガラス窓から中を確認すると資料片手に同僚と談笑している黒木さんを見つけ、先ほど新垣から教えてもらった番号に着信を入れた。

「おっ、はるちゃんのスマホ鳴ってるよー」

「由里子さんありがとー! ん?知らん番号からや、今流行りの詐欺かもしれんし無視しよか〜」

「あははっ、さすがはるちゃんは用心者だねえ」

「でしょでしょ〜」

 ガーン!!電話にでんわーー!!!って、そんなダジャレを言ってる場合じゃなく、慌ててオフィスの中の誰かに気がついてもらえるように大振りで手を振ってピョンピョンと飛んでアピールをした。

「…なんか外にいるし! あれってもしかして恵梨香ちゃん? あの子何で飛び跳ねてるの??」

「ケータイ全然鳴り止まへんけど…由里子さん、コレどうしたらいいと思う?」

 わたしの姿に気がついてくれた同期の吉高 由里子ちゃんに向かって、黒木さんに電話してるのは自分だからお願い伝えてというジェスチャーで伝えると…

「自分・電話・それ・お願い・自分・電話・こっち指差し…あっなるほどね! はるちゃん、その着信は恵梨香ちゃんだから出てあげて」

 スゴ〜イ!由里子ちゃんはジェスチャーで気がついてくれたみたいだ。

「マジっすか! …もしもし、どちら様でしょうか?」

「もしもし黒木さん、戸田です! お疲れ様」

「ホンマに戸田さんやった、さすが由里子さんは同期なだけありますね〜」

「黒木さん、悪いんやけど今ちょっとだけ外に出て来て話させてもらえへんかな?」

「大丈夫ですよー。ちょっと席離れま〜す」

 

 電話を切りオフィスの外へと出てきてくれた黒木さんへと駆け寄って、挨拶もそこそこに話始めた。

「突然ごめんな、黒木さんに美月ちゃんの事お願いしよう思ってここまで来たんよ」

「美月の事って…あ…あの子に何かあったんですか?」

 わたしに詰め寄り眉を下げて美月ちゃんの身を案じているのが伝わってくる彼女だからこそ、最も信用できる人物であるのだ。

「昨日のお昼御飯食べんかったから心配で夜間診療に車で連れて行ったらインフルエンザの診断を受けてな、今うちで面倒見てるんやけど…」

「インフルですか…美月の今朝の様子はどんな感じでした?」

「掠れ声で会話はしてたけど、起きてからずっと苦しそうな顔しとったわ…」

「そうですか…美月しんどいも苦しいもなかなか言わへん子やさかい、病気のサインがよう分からへんのですわ…」

 時計を見ると残り時間が15分となってしまい、慌ててお家のカギを手渡してどうして欲しいか矢継ぎ早に説明して伝えることにした。

「うち今晩出張で帰宅が夜中になりそうやから、黒木さんには美月ちゃんの看病を頼みに来たんよ。これお家のカギやから渡しとくな。帰る時は一階にある郵便ポストに入れておいてくれたらいいから、あとお家の住所とポストと共通の部屋番号とオートロックの解除番号は後から連絡するから、美月ちゃんのことお願いしてもいい?」

「うちは全然問題無いんで、早く行ってもらって大丈夫ですよ。わからないことがあればまたご連絡します」

「黒木さんホンマありがとう!それじゃあ美月ちゃんのことよろしく頼んだよ」

 

 わたしは黒木さんに深々と頭を下げて頼んだ後、仕事用のバッグをショルダーに替え、肩から下げてダッシュでエレベーターへと乗り込み、天海さんの車が停めてある会社の地下駐車場へと急ぎ足で向かったのだった。

 

 


[登場人物追加]

吉高 由里子

 開発・調査部の黒木さんの先輩で、黒木さんとはスパに行くほどとっても仲良しだ。

 戸田さんと新垣さんの同期であり、部類のお酒好きで過去にやらかしたエピソードも多いという天然タイプな人物。