熱愛の二人をスクープせよ

熱愛の二人をスクープせよ

(gkhg)

 


*現実の方々とは無関係のフィクションの世界です。

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 撮影現場のスタジオ入りをして、楽屋で衣装を着用しスタジオの待機休憩室へ入り、先客がいるのを見つけたわたしはいそいそと近寄って声を掛けた。

「恵梨香おはよう~! 今日は随分と早いね」

「まなみおはよ、わたしもたまには余裕を持って来てみたのよー、偉いでしょ〜」

「偉いねー、というかまあ、いつものんびりの結衣よりかはみんな早いんだけどね」

「それは間違いないな」

 ニカッと笑った戸田は、膝の上に雑誌を乗せて読んでいるみたいで、白黒の写真がぼんやりと見えて何だろうと興味が湧いてしまった。

「なあなあ、愛未さぁ、熱愛発覚!ってホンマなん?」

「ぇ…熱愛…いや、どうだろうねぇ…」

 誰と恋愛中なのかというプライベートの話は親友同士の間柄なのでしていなくもないが、現在交際中の相手は誰にも言わず今のところはひた隠しにしているのである。

「これ見てみ、愛未がイケメンモデルとラブラブデートのスクープ記事が、今日発売のプライデーに載ってんねんけど」

「ええ''っ!! プライデーに撮られたってマジですか…どれ、その写真本当にわたしなの??」

 戸田は手に持つ雑誌をわたしにはいどうぞと手渡してくれたので、わたしは大きな瞳をカッと見開いて噂の記事と写真をよく見てみた。

 

[比嘉 マナミ…イケメンモデルと夜の街でラブラブデート♡ 恋人繋ぎでべったりの上に、路上でキスまで熱く交わし、始終二人の世界というあまりの熱愛っぷりに、結婚間近ではないかと予想される…]

 

(うぁあああ!!! これは二週間前に夕方からデートした時の服装だし…まさかあの日撮られてたなんて…どうしよう、ヤバイ…)

 一応気休めの眼鏡で変装はしていたけれども、デート相手に逢えた喜びと甘々ラブラブという至福の時間に夢中になり過ぎていたわたしは、あの日は特に警戒心が薄れてしまっていたらしいことがわかった。

「まなみー、あんたで間違いないみたいやな」

「あ……う……その……えへっ」

 今のところ笑って誤魔化すしかない。

 だって、その写真に写っているイケメンモデルというのはこの撮影現場の共演者であり…常に世の中の老若男女からの人気を独占するあの子であるのだから、そう易々と言えるわけがないのだ…

「うちの知ってる奴なん?」

「さ、さあ? それはどうだろう…わたしにもわからないなぁ…」

「この写真の愛未の嬉しそうな顔と比べて相手の超クールな顔を見たら、お相手の方が随分と警戒心強くて賢いことは分かるわな」

「…そ、そうね…デートの度にきちんと変装するし、エスコートも上手いし、一緒に居たらものすごく安心するというか…」

「惚気か! じゃあさ、相手のイニシャルだけでも教えてよ~」

 スタジオの待機休憩室で自分の隣に座って興味津々に追求してくる戸田に心が緩んで話してしまいそうになっているが、ここは何としても踏ん張るしかない。

 相手はゆったりと着こなした男性ファッションの上にニット帽とサングラスとブーツで変装しているので、写真だけでは分かる筈がないとたかを括っているが、隣の戸田がわたしの肩に腕を回して顔を頬のすぐ傍まで寄せている方が大変気になってしまう。

 そこへ、助け船を出すべく存在がようやく到着し、わたしは安堵した。

トッティ、もうそろそろ愛未から離れてくれないかな…」

「おっ、のんびり入りのがっちゃんおはよう」

「結衣ぃ…ぁぅー…助けてぇ…」

 遅れてやって来た新垣に涙目でヘルプ信号を送った。

「ムッ…ちょっとトッティー! こっち来てお話しようか…」

「な、なんかがっちゃんめっちゃ機嫌悪くない? まあいいや、なになに~?」

 新垣に腕を引かれて部屋の隅に連れて行かれた戸田に、新垣は真剣な表情で話しているが内容までは聞こえない様子だが…

「えっ!? あれってあんたなのーーっ!! マジでなん?」

 静かに話している新垣の気遣いなど御構い無しに、大声で返事をする戸田に思わず青ざめるしかなかった。

「マジだよ、何か文句ある? 大事な彼女の肩に腕を回してたトッティに、ものっっっすごくイライラしてるんだけど…一発チョップしてもいいかなー?」

「ヒェッ、ごめんなさい! 知らんかったんやし、そんな恐ろしい顔せんといてよー」

「ああぁ…結衣までぶっちゃけてるし、しかも嫉妬してお怒りだし、どうなってるのよ…」

 撮影直前にゴタゴタしているわたし達三人に、他の共演者の方々は何も言わず触れずで、遠巻きに様子を伺っているだけなのが唯一の救いだった。

「ってか、プライデーに撮られるくらい気を緩めてラブラブデートするほどあんたらがお熱いとは知らんかったわ…しかも路チューってどうなの?」

「そりゃあ、大好きな人と一緒にいたら手も繋ぐしキスだってその時したいじゃない、それにプライデーの記事になろうが愛未は誰にも渡さない、それだけだよ」

 男前な新垣さんに胸が熱くなってトキメキに胸が踊っており、実際のわたしも体が勝手に踊り出していたのである。

 わたしが興奮気味に踊るその姿を、二人が若干引き気味に心配そうな視線で自分を見ているとは、出番が呼ばれるまで分からず仕舞いで恥ずかしかったのは言うまでもなかった…

 

 本日分の某ドラマの収録も終えて楽屋へと戻る前に休憩室でコーヒーを飲んでいると、おつかれ~と挨拶した戸田が再び隣に腰掛けてきた。

「あのさ、今度はまなみが男装してわたしとデートしてよ。プライデーに撮られんように気をつけたらいいんだし、名案でしょ」

「結衣一筋なのにするわけないでしょう」

「えー、デートするくらいええやん」

そこへ、最後に収録を終えた新垣がやって来て、わたしと戸田の間に割り込むように腰掛けてきた。

「わっ、ちょっと、そこうちの太ももの上やから!」

「よくない! わたしが一緒に行ってあげるから女子会しようね、いいよね」

「お…OK牧場…」

 戸田の膝の上に乗っている満面の笑みの新垣に、逆らえる者はどこにも居ないのだった…

 あと、これからはもう少しだけ変装を強化して、新垣さんとデートしようと思いました。

 

おしまい。