癒しのエプロン (前編)

癒しのエプロン (前編)

(case 白緋)

 


*真面目で優等生な白石先生は何処に…という感じで、スケベ石さんでも全然OK、むしろ大好物だよ~という方向けになります。

 

 

 今晩も医療の現場からようやく解放されて、疲労困憊で足取りが重く身を引きずるようにお家へ帰って来たら、ニッコニコと不気味なほどにご機嫌な様子の白石が玄関に立ってあたしを迎え入れてくれた。

 

「緋山さんおかえりなさい、ご飯にする? お風呂にする? それともわたしに食べられる?」

「ただいま…って、最後のエロ石はバッカじゃないの!! はあぁぁ…疲れてんのに勘弁してよ…」

「ふふっそれはね、わたしが頑張って癒してあげるねって気持ちを目一杯込めてあるんだけど」

「わたしを癒してくれるよね? の間違いでしょーが、あーあ、あほくさ…」

「もしかして照れてるの? 緋山さんは超可愛いね~」

「照れてません! ねえしらいし…疲れてるから早くご飯食べて寝たい…」

 

 靴を脱いで立ち上がり白石の胸元にもたれ掛かると、何も言わずにそのまま包み込んでくれる。

 白石の腕の中が好きだ。

 

「・・・・」

 

 白石の胸元に鼻を当て、彼女の匂いを吸い込んで一息ついて、また吸い込んで二息ついたらくすぐったいと笑う声が頭上から聞こえてくるけど、その笑う声すらも全部あたしのモノだからと言っとく。

 

「緋山さん、お部屋まで抱っこしようか?」

「いい、あんただってお疲れでしょ」

「あんたじゃなくて、名前で呼ばれたいなぁ…」

「しらいしめぐみ! ほら、呼んであげたんだからもう行く」

「しらいし抜きで呼んでよ~」

 

 ぶつぶつ文句を言う人は放っておくことにしてる。

 そうじゃないと白石相手だと延々とバカップルのやりとりみたいな会話が続いてしまうし、今晩のわたしはもう限界近くのくたくたでお疲れなんだからわかってちょうだい。

 そんなあたしの気持ちをわかっているのか白石は、食卓に並べてあるオムライスを二人分温め直して元の位置に並べてくれた。

 

「どうぞ召し上がれ」

「ふぁーい、いただきまーす」

 

 白石の分より半サイズのオムライスをスプーンですくってもぐもぐ食べる。

 

「味はどうかな?」

「まあまあ、美味しいんじゃないの」

「うん、それなら良かった」

 

 帰って来てから始終ご機嫌な様子の白石に自分が不在の時間帯に何かあったのかを尋ねてみた。

 

「別に目立って何もないけど、夕方過ぎに帰宅してからずっと医学書を読んでて、そのあとはお風呂の掃除しかしてないよ」

「ん、じゃあ、あたしが帰ってきたのが嬉しかっただけなのね」

「ふふっ、そりゃあまあね~」

 

 クスッと笑った顔を見てホッとしてる自分は随分と、白石に惚れてしまっているものだと思うと、この先のもっと未来の事など今は考えたくなくなる。

 

 食事を終えてうとうとし始めたあたしをソファーに座らせた白石は、食器を洗いあたしが脱ぎ捨てた上着と鞄の片付けまで終わらせると、隣に腰掛けて来た。

 

「ああ、お疲れさま、少し寝てたわ」

「いいのいいの、緋山さんはコレさえ着けてくれたら他に何もいらないから」

 

 白石の両手の上に乗せているのは、薄いブルーの花柄が可愛いエプロンだ。

 

「はあ〜? あたしにも家事の続きをやれってこと?」

「ううん、家事はもう終わってるよ」

「それならなんでエプロンを着けなきゃいけないのよ、意味不明…」

 

 いや、ひとつだけ家事以外を表わす意味を示すものがあるではないか!

 まさかとは思うけど…

 

「わたし、緋山さんの裸エプロンが見たいなあ」

「何言ってんの?! 嫌! ぜーーーーーったい嫌だ!!」

「え~、このエプロンだったら絶対似合うと思うよ、ねぇねぇひやまさ~ん」

「キモイ、うざい、やめて」

 

 ソファーの上でエプロンを押し付け合うあたしと白石。

 白石はこちらが諦めるまで頑なに断固として引かないような部分があるからタチが悪いのだ。

 

「っていうか、だいたい裸エプロンっていうのは男の夢とか言うし、強要されてするものじゃないの!」

「へぇー、男の夢とか言うなんて知らなかったなあ。ふーん、それもそうか…ふむー…」

 

 瞳を閉じて顎に片手を添えて考えるポーズの白石に一抹の不安がよぎる…