球場の売り子さん 白緋冴の小話 (その1)

球場の売り子さん 白緋冴の小話 (その1)

 


*ブログ初の(パラレル)白緋冴のお話になります。

*ここの白緋はすでにデキております。

**キャラクターがドラマの設定上から若干外れている為、すみませんと先にお詫びしておきます。

 


「あざまーす! 今日もサービスしときますね~!」

 ニコニコ笑顔で愛想よく接客している緋山さんは、老若男女問わず人気者の売り子さんだ。

「はいはーい、イカ焼き二つとたこ焼き一つですね~すぐに買ってきてお届けしますね」

 買出しを頼まれてもフットワークが軽く、営業スマイルもバッチリ忘れない。

「んー、お姉さんの歳はいくつかって? それは君がもう少し大人になったら教えてあげてもいいよ」

(ぴくっ!)

「はい? 姉ちゃん良い尻してるな~ですか…あざーす…」

(ぴくっぴくっ!)

「ええっ! うちの息子の嫁に来ないか…ですか…えーと」

(ぴくっぴくっむむっ! 緋山さんはわたしの嫁なのに…緋山さんはわたしの嫁…緋山さんは…)

 緋山さんの真後ろからどす黒いオーラが辺り一面に広がって見えるのは気のせいではないだろう…

 笑顔でソフトドリンクを売りながら、緋山さんのその先を見つめる瞳が全く笑っていないのは白石さんだ。

「なんだか背中から悪心が…って、またあいつか! すみません、あたし仕事中なんでもう行きますね」

 お客さんからの嫁入りの誘いを上手く交わして裏へといそいそと戻っていく緋山さんの後ろ姿を追いかけていく白石さん。

「こーら、しらいしぃー!あんたまたブラックオーラをこっちにガンガン飛ばしてたでしょ!」

「えーと?何のことかなー…」

「しらばっくれんな。あたしらは笑顔を売りに売り子さんしてんのに、そういうのはやめてくんない?」

「だって…緋山さんが嫁に来ないかって誘われているのを見たらさ…胸がぎゅーと痛いというか…非常にムカムカする…」

「はあぁ…仕方ないなぁ、ほら、こっちおいで…」

 お客さんが通らないひっそりとした通路の隅っこの方まで手を引いて歩き、白石さんを壁にトンッと押し付けて少しだけ背伸びして、白石さんの唇を塞ぎ柔らかな感触を確かめるようにチュッチュッとついばむ緋山さん。

 白石さんも緋山さんの背中に腕を回し、ぎゅっと服を掴んで血色の良い唇を舌でなぞり、薄く開いた隙間に舌を割り込み入れて、口内を味わうキスに酔いしれるのだった。

「…(じぃー)…」

「…んっ…しら…し…っ…」

「……ふ…っ……はぁ…」

 真横からじぃーと見つめる視線に気がつかないお二人さん。

「ごほん、ずいぶんと楽しまれていますね」

「…んー…んぐっ…ふわおっ!? 冴島っいつの間に!!」

「ぇ…ひゃっ?! これはその…ぅぅぅ…」

「こんな、いつ誰が通るかわからない場所でよくイチャイチャ出来ますよね…仕事中とわかってるんですか?」

「だって白石がお客さんに嫉妬深くてさあ」

「でもね、緋山さんが気になってしまうんだもん…」

「だっても、でもねもいりませんよ」

 ジト目で見てくる視線にタジタジになる二人に冴島さんは溜息を一つ溢し、サンバイザーで瞳をそっと伏せた。

「…ごめん、迂闊だった…注意してくれてありがとう、冴島」

「…冴島さんごめんなさい…反省しています。それと、わたし達を目隠ししてくれてありがとう」

 通路の隅の奥まった場所にいる二人を隠してくれるような立ち位置にいる冴島さんの気遣いに、白石さんはきちんと気がついて感謝の言葉を伝えた。

「いえ…お二人がクビにでもなったら、張り合う人もいびれる人も居なくなりますから、それはそれで困るので…」

「ふーん、寂しいから二人と一緒に働きたいって素直に言えばいいじゃん、ねーっしらいし~」

「そうだねーっ緋山さん」

「ふぅ…あまり調子乗っていると痛い目に合いますよ…」

「あわわわ…白石っ、も、もう行くよ!」

「わわっ、ちょっと待ってーっ!」

 冷めた瞳で睨んでくる冴島さんから逃げるように、二人は仕事の売り子さんへと戻って行ったのでした。

 


次回の野球観戦時に続く…