あなたを追いかけ隊! (前編)

あなたを追いかけ隊! (前編)

(さきひが・とだみつ)

 


*本編の内容から外れた番外編になります。

*現実の方々とは無関係のフィクションの世界です。

*本文の無断複製・転載等行為を禁じます。

 


 いつもわたしは彼女のお尻を追いかけている…という言い方をすると語弊がありそうだけど、先輩である彼女に社内では四六時中くっついて回っていることは確かだから、あながち間違いではないだろう。

 今だって、経理・財務部まで書類を届けに行ったきり帰って来ない(高々15分程度)彼女が心配で心配過ぎて、同僚には買い出しに行くと言付け、オフィスから抜け出して様子を見に来ていた。

 経財部の階のフロアに到着し、女性の話し声が聞こえて廊下の角からチラリと顔を覗くと、待ち人を発見した。


「えー、この前それをやったら反応が微妙だったんだけど」

「そうなんですか!? いいと思ったんですが、何せ鈍感な子ですからね…」


 わたしの愛しの紗季ちゃんと立ち話をしているのは、自分の同期の井上 真央ちゃんのようである。

 仕事中は比較的クールな紗季ちゃんだけど、プライベートの顔が出ると柔らかくて人当たりが良いものだから、それを知ってしまうとギャップ萌えで惹かれる人が多かった。

 (ぐぬぬ、わたしの紗季ちゃんに上目遣いで何を話してるんだろう…気になる!)

「わたしの紗季ちゃんになに色目を使ってるんじゃいあの女!って感じ?」

「そうそうそんな感…ってなんで背後にいるのよ!」

「シーッ…紗季さん達に聞こえてしまいますよ…」

 なんと、そこにはいつの間に来たのか、わたしが覗き込んでいる背中に戸田が貼り付き、足元には戸田が溺愛している美月ちゃんがいて、思わずひっくり返りそうになった。

「…なんで恵梨香と美月ちゃんまでそこにいるの?」

「…うちらは午後から経理・財務部を交えた社内会議に参加するんよ、ね〜美月ちゃん」

「…はい、総務部と合同で資料を作成しているので、恵梨香さんとは今日一日共に行動しているんです」

「…ほうほう、それはもうラブラブで羨ましいね!」

 密かに惚気てくる二人に羨望の眼差しを送り、それを受けた戸田から膝カックンされた。

「アウッ!! …むぐぐっ…」

「シーッ! 比嘉さん静かにしてください…」

 膝カックンされて変な声が出たわたしの口を塞いだ美月ちゃんと戸田は、どんだけ息があった悪戯っ子ペアなんだと、羨望ではなく厄介なのかもしれないと思った。


「では、次は媚薬を使ってみてはいかがでしょう?」

「ちょっ、いきなりぶっ飛んだこと言うねぇ…真央ちゃんも使ったりするわけ?」

「ふふっ、それは内緒です…」


 どんな会話をしているかここまでは聞こえないが、二人共頬を染めてにやけた顔をしているのだけは遠目でもわかる。

 (もしかして紗季ちゃんは、真央ちゃんみたいな小柄な子の方が可愛くて好みなの…?」

「うーん、まなみーは体でっかいからこれは分が悪いかもな…」

「高身長な女性は背が低い者から見て憧れますもんね…」

「やだなぁ二人共、わたしの味方じゃないの…?」

「わたしはもちろん親友の味方に決まってるでしょ」

「恵梨香さんの親友はわたしの親友でもあります」

 二人はお互いに見つめ合い、まるでわたしのことは見えていないかのように恍惚とした視線を飛ばし合っている。

「ちょっとさあ、イチャつきたいんだったら他所でやってくれない?」

「美月ちゃん…うちだけを見ていて欲しい…」

「もしもーし、しもしも~?」

「恵梨香さん…あなたしかこの目には魅力的に映りませんから…」

「聞こえてないんかーい! なんだろう、この状況デジャヴだ…うっ…結衣」

 前にも体験した覚えがあるような、自分じゃなくてもう一人の親友が体験したような記憶がふいに思い浮かんだ。

 

 そうこうしているうちに、三人で覗き見しているところに彼女が寄って来てしまい、低音気味に声を掛けて来た。

「こらっ、そこの関西人バカップルとうちの嫁! ここで何をしてたんか聞いてもいい…?」

 仁王立ちしている紗季ちゃんが現れた!

 

 


[登場人物追加]

井上 真央

比嘉さんの同期で仲は良好であり、身長が高い比嘉さんに憧れている。

達筆レベルの文字を書き、経理・財務部所属。