とだくんとあらがきくん (その2)

とだくんとあらがきくん (その2)

 


*現実の方々とは無関係のフィクションの世界です。

*本文の無断複製・転載等行為を禁じます。

**主要人物はほぼ全員男体化の作品になっておりますので、苦手な方には先にお詫びしておきます。

 


 そんな戸田くんについて、一つ非常に気になっていることがあった。

 戸田くんのデスクの上に置いてある写真立てには何故か二年後輩の谷村くんのオフショットが飾られているのである。

 谷村くんとは、入社二年足らずで営業部門優秀者として年度末の社内表彰式で表彰される程の優れた人材であり、彼の写真を飾ると仕事運や金運が上昇するという噂が食品経営企画部内では有名らしく、この総務部内の女子社員の複数の人間も噂を聞きつけて同様に飾っているのだが、男子で飾っているのは戸田くんただ一人だけなのだった。

 しかも、その写真立てを手に持つと必ずこう呟いているのが密かに聞こえてくる…

『美月くんめっちゃ可愛いよなぁ~チュッ❤︎ 彼とやったらイロイロ…イイコトしてみたいわぁ…』

 

 自分のライバルは女子社員だけではないの…?

 

 しかし、戸田くんは会社内で重たい資料を運んでいる女の子を見つけると、駆け寄って親切に持ってあげている優しい一面を何度も目撃したり報告を聞いていて、その都度彼女たちからお誘いを受けているのに彼の反応と言えば…

 

「ここまで一緒に運んでくださりありがとうございました」

「いいっていいって、法務部だったらちょうど比嘉くんに会って挨拶したいと思ってたし気にしないで」

「戸田さん、あ、あの…よかったら今度お茶でも飲みに行きませんか?」

「うーん…ごめんやけど、うち好きな子おるんよ。だから、お誘いは誰からも受けてないんよ、ほんまごめんな」

「…はい…わかりました、こちらこそ突然誘ってごめんなさい」

「あー、えりかじゃん、何々~うちの後輩ちゃんをナンパしてたの?」

「違いまーす! ほんならまなみーまた昼食の時間、よろしく~」


 真のライバルはもしかしたら写真立ての中の、はにかみ笑顔の彼なのかもしれないと薄々感じ取っているのだった。

 

 ある日の夕刻を過ぎた頃、社内カフェにて僕は比嘉くんとお茶をしながらお話していた。

 

「ということなんだけど、まなみくんはどう思う?」

「あ~リキュールがエッセンスで入った絶妙なチョコケーキ、口の中で蕩けて堪らないなぁ…美味しい♪(高い声)」

「おーい、今の話ちゃんと聞いてた?」

「聞いてた聞いてた! えりかはうちの会社の女子に優しく親切でモテモテなのに、ここ一・二年ほど彼女を作らず一途に好きな子がいると、これで合ってる?」

「うん、さすが法務部の中で鍛えられているだけはあるね」

「紗季先輩から、食事中でも話だけは逃さずに聞くようにって毎度口酸っぱく言われてるんだもん、こうなりますよねー」

 

 比嘉くんの部署の先輩である相武さんは、仕事中のクールな一面とオフの時の柔らかい一面のギャップが可愛くて、年上女性から密かにモテるタイプの人だと、比嘉くん情報より。

 

「相武さんがまなみくんのことを気に入っているから、ビシバシ言ってくれてるんだよ」

「そうなの、紗季先輩はわたしには厳しいけど優しい人でもあるから、めっちゃ惚れてるんだ」

 

 先輩に惚れているとは、どういう感じなのか、自分と同じ意味合いの惚れているのかどうかを比嘉くんにズバッと聞いてみたくなった。

 

「ねぇ、その男が男にめっちゃ惚れてるのって今の時代だと普通なの?」

「おっおお、ぶっちゃけて聞いてくるねぇ」

「だって、写真立ての中の谷村くんにメロメロになってるトッティーの行動に一切突っ込んで来ないじゃない、だからどうなのかなと思って」

 

 比嘉くんはどう返事しようかしばらくの間思考して、紅茶をふた口飲み淡々と話し出した。

 

「普通か普通じゃないかで割り振ったりするのは好きじゃないから、それについては答えないけど、多分わたしもえりかも盲目でその人に惹かれてたり惚れているわけではないとだけ教えといてあげる」

「だいぶ核心をつくような深いところまで話してるね」

「だってをお返しすると、写真立ての中の谷村くんにメロメロになってるえりかの気持ちがよくわかるし、ゆいもえりかの一挙手一投足が気になっているくらい彼のことが好きってことなんでしょう?」

 

 自分のことになるとかなり鈍感な面があるのに、人のことになると敏感に察することが出来る比嘉くんには隠していても言動から既にバレているのだろうと思った。

 

「僕も彼のことがずっと大好きなんだ…まなみくんにはもう隠さなくてもいいのかな?」

優しく微笑んでうんと頷いてくれる比嘉くん。

「隠さなくてもいいよ、わたしもゆいのことを気に入っているから応援したいし、ビシバシ言う方が愛があるような気がしたりしない?」

「まなみ先輩は相武さんからの愛の鞭だけ受けておけばいいよ」

「えーーっ、わたしもゆいのことを愛してるのに、ビシッと振られてんじゃん」

「はいはい、わたしもまなみくん愛してる大好き気になってる~」

 

 その言い方ウケるから!と笑って場を和ませてくれる比嘉くんのユーモラスなところが大好きだ。本人には言わないけどね。