危険な恋が始まる音が耳に届いた…

*(ドラマ) 未解決の女とBOSSのクロスオーバーものになります。

*キャラクターがドラマの設定上から若干外れていたらすみませんと先にお詫びしておきます。

*木元ちゃんの年齢は百々瀬さんの二つ上にしています。

 

危険な恋が始まる音が耳に届いた…

 

 偶々飲んでいたバーで隣に座って飲み始めたのが彼女と知り合ったきっかけだった。

 自分よりも長身でキリッと整った顔立ちが印象的で、例の暑苦しい刑事の真剣な表情を彷彿とさせる顔に惹かれてしまったのが、これまでの人生でも最大のミスであることは間違いなかった。

あの日の晩、先に話し掛けて来たのは彼女だった。

 

「あの、こちらにはいつも来られているんですか?」

カクテルを一口飲んでカウンターテーブルに置くタイミングを見計らっていたのか、つい先程隣に座って飲み始めていた彼女が話し掛けて来た。

「…今日は偶々この店に辿り着いて飲みたい気分だったんです…あなたは?」

「わたしも偶々ですが、誘った上司に今日は行けないと振られてしまったので…」

 肩に掛かっているゆるいウエーブの髪型から、お洒落に気を使っている印象を受けたのと、気の強そうな瞳と頭の回転が良さそうな部分が垣間見えており、友人として付き合うなら好印象と言った人物かもしれないと思った。

「ふふっ、あなた押しが強そうなのに、その人には相当弱いんでしょうね」

「そうですね、まったく何年経っても追いつけないし敵わない人なんです…それにあの人ったらかなり暑苦しいんですから、腹立つことも多々ありますね」

「こんな初対面のわたしに上司の愚痴を話してもいいの?」

 年齢が近いのか、それとも同性だから気を許しているのか、わたしに対する警戒心が薄いというのはどうしてか、気になってしまう。

「どうしてだろう…あなたとは初めて会った気がしないんですよね…」

「前世では恋人でした、とか言って口説いて来たりして…な〜んて…」

「…すみませんが、もっと近くでお顔を見せてもらってもいいですか…?」

「…えっ?……ぁ……んっ……」

 バーカウンターの隅の席に座るわたしの顔を覗き込み、片手を肩に置いて引き寄せ合うかのように口付けられると、その人の唇に自分からも唇を寄せて深いキスを交わしていた…

「…わたしともう少し一緒に飲んでくれますか?」

「…口説いているなら性別をもう少し考慮した方がいいと思うのですが…」

「確かにそうですよね。…でも、わたしは誰とでもキスしたいと思うわけではないんです」

「誰とでもしないなら、今のキスはどういうこと…?」

「あなたに興味がある…そういう意味です」

 体がカッと燃えるような火照りを感じ始めていて、理性を徐々に溶かしてしまうような情欲を灯した彼女の熱い眼差しを受けているが、このまま流されてしまってもいいわけがない。

「あなたと来るはずだった上司に怒られてしまえばいいんですよ…」

「怒られても構いません。いつもお叱りを受けていますし、もう慣れていますから」

「わたしだって誰でもいいわけではないのに、まったくあなたみたいなタイプにはホント困りますよ…」

 カクテルをググッと飲み干し、彼女の肩に頭を乗せて鎮まらない火照りを持て余していることを、そっと耳元に近づき囁いて伝えたのだった。

「…わたしは木元真美と言います、よければ、あなたのことをもっと教えてくれませんか?」

「…百々瀬佐智です、あなたおいくつですか?」

「わたしは31歳です」

「…そうですか、わたしより2歳年上には見えない可愛らしい童顔なんですね…」

「あの、もうそろそろ綺麗なお姉さんと言われたいんですけど」

「十分に整った顔立ちなのに、これ以上は褒めません…残念でした」

 ふんわりと楽しそうに笑い、抱いているわたしの肩を一撫でし、お店から出ようと言った木元さんと連れ立ってタクシーを拾うと、自分のマンションへと向かって走り出していくのでした。