ウブな彼女に要注意 (前編)

ウブな彼女に要注意 (前編)  (パラレルオフィスラブ)

(がきとだ)

 


*本編の内容から外れた番外編になります。

*現実の方々とは無関係のフィクションの世界です。

*本文の無断複製・転載等行為を禁じます。

 


 いつもの休日と変わらずに、お家でのんびりDVD鑑賞と陽の光を心地よく浴びながらのお昼寝に悠々と付き合っているが、彼女の言動に一喜一憂しているとは言えない。

 お互いに普通の友達と変わらずな関係として遊んでいるだけだし、何も変わらない日々をこれから先も過ごしていくとその時までは思っていたのに、予期せず突然やってきた二人の恋の芽吹きに心動かされていくのだった。


「わたしね、トッティーのこと好きなのかも…」

 こちらはとっくの昔から小さな恋の蕾が芽吹いていたのに、あなたはまだそういう段階なのかと落胆して落ち込みそうだ。

「わたしも好きだよ、というか親友なのに好きなのかもレベルだったわけ?」

 好きの中にもいろいろな感情の種類があるし、好きに込められた想いが友達に対するものであると大体の人は考えるだろうと思い、同性である故に過度な期待はしないが気にはなるよね。

「ううん、親友としての好きを振り切るくらいの好きっていう意味なんだけど…同性の親友なのに変だよね?」

 新垣からも親友以上の感情があるとわかり、落胆から奮起に変えてしまうとは、人間なんて意外と単純な生き物だなって思う。

 だからわたしはきちんとした真意を問い掛けることにした。

「別に変ちゃうけど、それがマジな告白だったとしたらかなり複雑なんですけど…」

「複雑って言われたら、どうしたらいいの?」

口説き文句まで教えてあげないといけないようなので、きちんと伝授して差し上げましょう。

「もっとこうビシッと、あなたのことをずっと愛していると気がついたんだ!くらいのことを言ってもらわないとさ、心に響いてこないよね?」

「わかった。それじゃあ訂正して、わたしはトッティーのことが…ううん、恵梨香のことをずっと愛しく思っていると気がついたから、今からわたしのお嫁さんになってください」

「初めて名前で呼んでくれた上に、いきなりお嫁さんとは大きく出すぎだって…ホンマにガッちゃんには参るわ…」

「えっと…恵梨香の返事は…?」

「ごほん…結衣のお嫁さんになるから大事にしてよね!」

「もちろん! 目一杯大事にするよ」

 満面の笑みがこぼれた新垣に飛びつくように抱き着いて、よろけることなくしっかりと抱き止めてくれたことが嬉しくて、心音が最高潮に高鳴っていたのである。

 

 

 それからというもの…お付き合いを始めてからもう二か月近く経つのに、手を繋いでキス止まりってどういうことなのかと悩まされるとは、新垣の恋愛観について一から尋ねないといけないことがわかった。

 

「あのさ、ぶっちゃけて聞くけど、ガッちゃんは手を繋いでキスするだけで恋人として満足してるの?」

「えっ? 同性でもキス以上のことってしてもいいの?」

 思わず前のめりで項垂れて、ゴンッ!!とデスクに頭をぶつけてしまう。

「痛ったーっ!!」

「ちょっと大丈夫?」

 その返事に目ん玉が飛び出るくらい驚いたというか、会社のデスクに頭をぶつけて地味に痛いし、全然大丈夫じゃないです!

「今時の幼稚園児でも、女の子同士だろうが手を繋いでキスくらいはするんですけど…」

「えーっ!? もしかしてトッティーも幼稚園児の時にしてたの?」

「そんなんもう覚えてへんし、女の子とのキスも早々と済ませてる言うたらウブな新垣さんは頭吹っ飛びそうやな」

 予想通りに新垣はガーンと衝撃を受けて絶句している。

「こらそこ! 口よりも手を動かしなさい」

 ちょうどそこへ席を外していた天海さんが戻って来て早々に、厳しい声が飛んでくるのだった。

「はーい、あっ! 天海さんに一つ質問してもよろしいでしょうか?」

「何よ戸田、改まっちゃって珍しいね。答えられる範囲内であればどうぞ」

「天海さんも同性とキスしたことってありますよね? いくつぐらいに初キスでした?」

 さすがの天海さんでも面食らったのか、前髪をかき上げて呆れ顔でこちらを覗いている。

「あんたねぇ、仕事中に尋ねるような質問じゃないんだけど…」

「ちょっとトッティー、同性に社内一番人気の天海さんでもさすがにしてないはずだよ」

 新垣のそういうウブな部分もホントは大好きだけど、そろそろどうにかしたいところ。

「おっ! 新垣はウブな反応でいい子ね~、あんたもちょっとは見習いなさいよ」

「ウブ過ぎて悩まされるほど参っているくらいなのに、こっちは見習ってられませんよ…」

「はーん、なるほどねぇ。悩ましい戸田にちなんで答えてあげてもいいわよ」

 ニヤニヤッとした顔だけで何を考えているのかわかりますよ、天海さん。

「天海さんは同性とキス以上のことをしたことがあるんですか?」

「新垣って聞くときは容赦ないのね~、あるある! キスくらいは幼稚園の頃すでに済ませてるし、それくらいモテてるってことで。仕事に戻るわね」

 

 天海さんは颯爽と歩いて部長室へ入って行った。

 自他共に認めるくらいモテる人だと瞬時にわかるくらい、背中からオーラを発しているのが見えた。

 ぽかんとした顔で天海さんを見送っていた新垣とパッと目が合い、頬を染めながら慌てて自分のデスクに向き直って仕事を再開した姿が不覚にも可愛いと思うくらい、わたしもまだまだ彼女に対しては随分と甘いようである。