リップスティックキッス その3

リップスティックキッス その3

年越し年明けSS 未解決商事の年末年始女子会 (小休憩中の小話)

 


*現実の方々とは無関係のフィクションの世界です。

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がきひが

(コーヒー飲んでも眠いな…愛未は楽しそうにゲームに熱中してるし…うーん、気が緩むと眠気が…)

 眠くなりながらも唇の渇きを感じ、自分の鞄に入れてあるリップクリームをのそのそ歩いて取りに行き、ソファーに戻ってゆっくりと塗った。

「結衣も一緒にゲームしようよ~」

 一旦休憩と言って隣に座った比嘉はリップクリームを塗っている姿を目敏く見ていたのか、唇潤って綺麗だね~と言ってお酒を一口飲んでふわっと笑った。

「愛未さんは可愛いねぇ」

「ん〜? 結衣の方がかわいいよ! ゆいっゆいっ♡」

 ワンコみたいに戯れついてくる愛未をハグしてあげると、幸せだなぁとしみじみつぶやく声を聞いた。

 空気が乾いているので、比嘉の唇も潤してあげようと考えて尋ねてみた。

「愛未も塗る?」

「え、わたしも? どうしよう……あっ!」

 愛未の背中に腕を回して右肩を掴んでグイッと引き寄せて唇を塞ごうと動いたが、愛未は隣に誰か座って来たことに意識が向いたのか勢いよく顔を逸らしてしまい、わたしの唇は愛未の耳に触れた。

「愛未先輩ー! わたしもお酒ご一緒してもいいですか?」

「波瑠ちゃんベランダから戻ったんだー、んん?? 結衣っ…!!」

 唇が触れた耳を素早く押さえて頬を一瞬で赤らめた比嘉は何が起こったかパニックになっているのか目がぐるぐると泳いでいるが、わたしはわざと邪魔に入ったであろう相手に視線を向けた。

「…ずいぶんとタイミング悪いんだけど、わざとだった?」

「新垣さんがそう思うのでしたらそうかもしれませんね」

 悪びれもせずに冷静な表情でこちらを見据える波瑠ちゃんに対して、睨みをきかせる余裕が無いくらい眠気で思考が鈍ってきている自分では分が悪いと思い、スッと立ち上がってコーヒーのおかわりをしようとキッチンへと向かうことにした。

「結衣? 何かずっとご機嫌斜めだなぁ…」

「愛未せんぱいっ、喜んでお酌しますよ」

「わーいありがとう~! 波瑠ちゃんも飲もう飲もう」

「はーい、お付き合いします♪」

二人の会話が嫌でも耳に入ってきた。

(愛未の鈍感…年が若い後輩の方が可愛いんだろうな…すごく複雑)

 


 蕎麦つゆを作っている戸田の隣で洗い物をしている谷村さんに声を掛ける。

「谷村さん、熱めのコーヒーのおかわりお願いしてもいい?」

「もちろんいいですよ。恵梨香さんお湯沸かしてください」

「むーっ、そのやり取りは何よ~、ガッちゃんもわたしにコーヒー淹れてって直で言えばいいのに」

「えー、トッティーよりも谷村さんが淹れてくれたコーヒーが美味しかったからお願いしてるんだよ」

「ホントですか! ありがとうございます。ふふん、残念ながら恵梨香さんの出る幕はないみたいやね」

「はいはい、お湯だけ沸かせばいいんでしょう。日本一のお湯沸かし職人にでもなるわよ」

 ぶつぶつ文句を言いながらもきちんと手を動かしている戸田を見て、谷村さんと一緒になって笑った。

 谷村さんと戸田との会話は自然と入りやすくて気持ちが不思議と軽くなった。

 谷村さんの第一印象は、気難しそうで気楽に話しかけたら不機嫌オーラ全開で心折られそうとか考えていたけど全然そんなことはなく、人懐っこい笑顔を見せてくれるところが可愛いと思った。

 波瑠ちゃんも谷村さんも同じように年下で自分の親友と仲が良くて、彼女たちを別格で可愛がっている印象も大して変わらない筈なのに、自分へ向けてくる感情や意識の違いをひしひしと感じていた。

 比嘉と波瑠ちゃんが座っているソファーにはもうしばらくは戻れそうにないのだった。