リップスティックキッス その2

リップスティックキッス その2

年越し年明けSS 未解決商事の年末年始女子会 (小休憩中の小話)

 


*現実の方々とは無関係のフィクションの世界です。

*本文の無断複製・転載等行為を禁じます。

 

 

(このメンバーの中で波瑠ちゃんが一番内心の読み難い子なんだよね…あの子以外は心理面を察せる範囲で体現してるんだけど…)

 色恋関係なくその人物を探ろうとしてしまうのはもう癖になっているのだろうな。

 隣に座る紗季ちゃんの髪を指で絡めて遊びもって考え事をしていても、紗季ちゃんは嫌がることもなくお酒を飲みながら京香さんとお喋りしていた。

 わたしはリップの塗り口を綺麗に拭いて京香さんに手渡すことにした。

「周りにはわかりやすく見せているけど、実際は読み難いタイプですよね、彼女…塗り口拭いたのでどうぞ」

「まあ、そこも魅力的だと思っているんだけど…ありがとう、試しにやってみますか。

波瑠ちゃん、キリが良い時でいいからこっちに来てくれるかしら?」

「はい、すぐに行きますね」

 さすが直属の上司である京香さんの言うことは従順に聞いているのだなぁと、あたしは隣の従順とは言いがたい部下でもあるはずの自分の彼女を見てクスッと笑った。

 


きょはる

 防寒着を着込み、波瑠ちゃんを連れてベランダに出ると二人で夜空を見上げた。

「もうすぐ一年が終わってしまいますね」

「うん、でもまた新しい一年も同時に始まるわよ」

「そうですね」

 今はもうだいぶ落ち着いているけど、波瑠ちゃんはこの家に来る前の挨拶回りの時から既に、機嫌が悪いという姿を隠していなかった。谷村さんにそれとなく聞いても、自分も理由がわからないから今は尋ねずそっとしているのだと言っていた。

 ただ、この家に着いた瞬間と比嘉さんとお話している時にだけ上機嫌な様子を見せていたのは、気になる部分ではある。

 そこに答えがあるのだとしたら、わたしは一体何が出来るのだろうか…

 違う答えを導き出すことができることを願って、今は問い掛けてみようと思う。

 羊ちゃんから借りたリップクリームをサッと塗り、波瑠ちゃんに一歩近づいて両肩に手を置いてその身を引き寄せた。

「…!? 京香さん…ごめんなさい」

 咄嗟に顔を逸らしてしまった為、勢いが止まらない唇は波瑠ちゃんの頬に当たるのだった。

 片手は肩に置いたまま、もう片一方で頬を撫でてわたしは彼女に問い掛けた。

「波瑠ちゃん、それはどういうごめんなさいなの?」

「わたしは先日、美月さんとお付き合いすることに決めたのですが…」

「ぇ…ええっ!? 谷村さんって本当?」

 コクンと頷いた後に、まだ続きがありますと言っているので口を挟むのは我慢し固唾を飲んで聞く事にした。

「その時は決めたのですが、ただ…わたしは、この人だけは誰にも渡したくないと強く想う相手が現れたので、美月さんには謝罪をしてお断りしようと考えています…」

 やはりそうだったのかとその言葉を本人から直接聞いて納得が出来た。

 一緒に仕事していて見てきた波瑠ちゃんは周囲に明るく振る舞って、全ての人を平等に見て同じように思いやりを持って接する[一視同仁]を念頭におき体現している彼女が、唯一その様相を崩したのだから相当な思い入れがあるのだろう。

「あなたが求めて止まない相手は比嘉さんなのね…?」

「はい、ですから京香さんにも…」

わたしは咄嗟に間髪を容れずその続きを遮った。

「謝らせない! わたしもあなたを幸せにしたいと強く想っているのだから、諦めないわ」

 波瑠ちゃんの体をギュッと抱きしめて、彼女と心が通じ合ったあの日の記憶がいつか戻りますようにと、寒空の上に輝く星々へと一心に願うのだった。