年越し年明けSS 未解決商事の年末年始女子会 ⑩

年越し年明けSS 未解決商事の年末年始女子会 ⑩

 

*現実の方々とは無関係のフィクションの世界です。

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 新垣の胸に顔を埋めたまま、わたしは泣き疲れて寝てしまったらしい。

 冬の寒空の下、新垣が抱き締めてくれる体だけ心地良くて暖かいのに、涙で冷えた心までは溶かしてくれなかったのだった…

 抱き締めている片腕を離してコートのポケットからハンドタオルを取り出して、涙で濡れた頬を拭った新垣は、天海さん家に戻るからおんぶするね、と言って背中に背負ってくれた。

 

「………ゆ…い……」

「ん~…なぁに?」

 

 微睡みの中で大好きな人の名前を呼ぶと、すぐに返事してくれる声が聞こえてきて嬉しく思った。

 ここにいるから大丈夫と揺れる背中から伝えてくれるみたいで安心する…

 愛しい人の体温に身を預けて、そっと眠りについた。


 天海さんのマンションに着いた新垣は、エントランスのインターホンで呼び鈴を鳴らし、オートロックを解除してもらい自動ドアを通り抜けてエレベーターで上がって再びその家の中へと入って行った。


****


天海「お帰り、闇鍋脱走者諸君…あらまあ、なになに? 疲れて寝てしまうようなことでもしてきたのかしら?」

新垣「すみません、わたしが代わりに事の経緯の説明と謝罪などをきちんとしますから、恵梨香をベッドで休ませてください。お願いします」

天海「…っ!? ……へぇー、新垣がその子を名前で呼ぶなんて初めて聞いたんだけど。もしかしてわたしの恋人、あなたに奪われちゃった?」

新垣「いえ、それは出来ないと思っています…わたしは恵梨香に奪われる可能性はあるかもしれないですが、ね」

天海「新垣はホント食えない子ね、その子わたしが引き受けるから」

 新垣の背中にしがみついて眠るわたしを天海さんは起こさないよう静かに受け取って、姫抱きして寝室へと連れて行くのでした。

 天海さんと入れ替わるようにして比嘉が玄関先でブーツを脱いでいる新垣の傍までやって来た。

比嘉「お帰り結衣。まさか二人で抜け出すとはねー、ビックリして手元にあったコップのお酒こぼすかと思って焦ったよ」

新垣「愛未は怒ってないの?」

 ブーツを脱ぎ終えてきちんと隅っこに揃えて置き、玄関先の壁に持たれている比嘉と向かい合って尋ねた。

比嘉「上司の立場がないじゃないの~!と御立腹してた天海さんと残り一人を除いて、他全員爆笑してた。あの子達音もなく消えるくノ一だったの?!ってさ」

 怒っているかどうかの問いに答えない比嘉は、敢えて自分のことは語らないようにしているような気がして、改めて尋ねた。

新垣「天海さんともう一人は誰? 愛未?」

比嘉「波瑠ちゃんだよ。結衣と言い合いになってからあの子随分と神経がピリピリしてるみたいでさー、わたし結構心配してるんだよねー」

 それを聞いた新垣は一瞬にして顔を曇らせながら小さく溜息をつき、比嘉に身を預けて肩に額を擦り寄せた。

 「…やだ…あの子よりわたしを心配してよ…」と小さく呟いた新垣の声と被るようにして、寝室から戻って来た天海さんに「新垣には罰としてコレを着てもらうから!」と大きめの声で罰ゲームの宣告を受けたのでした。

新垣「…ええっ!!! それはちょっと…嫌かもしれない….愛未、お願い助けて~」

比嘉「天海さん、わたしが結衣の代わりに着ますよ~! よーし任せといてっ」

天海「だーめ、きちんと本人に罰を受けさせないと多分このままお咎めなしでは、あの子の気が治まらないと思うよ、先輩の比嘉さんならわかるはずだけど」

比嘉「…確かにそうですね…結衣頑張って耐えて、写真は個別で撮っておくから」

新垣「愛未の悪趣味! 写真なんて撮ったら絶交するんだからね」

 面白くなってきたと言って笑っている天海さんと、オロオロして慌てふためく比嘉と、アレは着たくないと嫌そうに顔を歪ませる新垣がその場から未だ動かずにいるのだった。