年越し年明けSS 未解決商事の年末年始女子会 ⑧

年越し年明けSS 未解決商事の年末年始女子会 ⑧

 

*昨年ツイッターにて実施した、闇鍋パーティから抜け出すCP投票の一位となった、白緋の中の人達を書く流れにようやく辿り着いたので、どうぞご覧ください。

*現実の方々とは無関係のフィクションの世界です。

*本文の無断複製・転載等行為を禁じます。

 


 マンションの外に出て外気を目一杯吸い込むように、ストレッチする様な姿勢で腕を上げて深呼吸をした。

 新垣は眠気が少々出てきているのか、口元に手を当てふわっと小さく欠伸をしているのが見えて目が合うと恥ずかしそうに顔をプイッと逸らしていた。 

 

「もう眠くなってる?」

「ちょっとね、トッティーは?」

 

 お酒飲んでないからまだ大丈夫と言うと、送り当番も任されてるんだね、と労うようにペコッと律儀にお辞儀をする新垣に、まあ年一くらいは真面目に奉仕活動してもいいんじゃないのと偉ぶりながら返すと笑われてしまった。

 

「…手繋いでもいい?」

「…いいよ。って、いつもは聞かないのに、今日は聞いてくるんだね」

「わたしだってガッちゃんに触れていいか迷う時があるの……早く行こう」

 

 新垣の片手を取ると指を絡めて、二人並んでゆっくりと歩き始めた。

 わたしは歩きながらよく考えてみると、天海さんとは肩に手を回してくれたり腰に腕を回してエスコートされることが多く、こういう繋ぎ方は殆どしたことがないし、元恋人の美月ちゃんに関しては腕を組んで寄り添っているだけで自分が引っ張ってあげられているという充足感を得ていたことを思い出していた。

 美月ちゃんと久しぶりに触れ合って、彼女との記憶がまだこの腕の中に残ってることが心なしか少し切なくて、胸がズキンと痛みを持って疼いた。

 新垣に話したらたぶん呆れて信じられないと言われるだろうな…

 そんな過去の恋人のことを考えているとは思っていないだろう彼女と絡めている指を微かに動かして撫でた。

 

「まさかあの暗がりの中で一緒に抜け出そうなんて言われるとは…」

「スリルがあって結構ドキドキしたでしょ」

「ドキドキはしたけど、何となくトッティーだったらやりそうな気はしてたかな」

「以心伝心ってやつ?」

「そんな嬉しそうに言わないでよ」

「なんで? ガッちゃんが勘付いてたんだったらわたしは嬉しいけどね~」

「こっちは天海さんから一度警告を受けてるのに、これじゃあ退場処分になりかねないんだから…」

「天海さんにイエローカードを貰ったんだ、ガッちゃんだけが悪いわけじゃないのになぁ」

トッティーは呑気でいいよねー、あの家へ戻るのがほんと憂鬱…」

 

 そういえば、食品経営企画部の三人の到着後にゴタゴタ騒ぎを起こしてたことを思い出した。

 波風を立てずにいるのなら聞かずにいた方がいいのかもしれないけど、気になったまま年を越すのは自分の性分を考えるとまず難しいだろうと思った。

 駅や繁華街への通りとは反対方向に位置する、噴水広場がある大きめの公園へと向かっているのだが、そこへ行き着く前に色々と聞きたいことを我慢出来そうになかった。

 

「あのさ、ゴタゴタしてた時のガッちゃんの恐ろしいくらい敵意むき出しになった顔を見て、よっぽど何かあったのかなって思ったんだけど…」

 

 やっぱりアレが気になったのかと、弱ったなぁと言いながら困った顔をしている。

 

「あったといえばあったし…自分でもどうしてあそこまで感情を高ぶらせてしまったのか、自分自身の気持ちが分かりきっていないんだよね…」

 

 新垣を怒らせて引っ叩かれたことはあれど、わたし絡みであんなに感情を爆発させたことが今まで一緒に過ごして来た中であっただろうかと、思い起こしてもすぐに出てこなくて切なさが一層増すのだった。

 

「波瑠ちゃんと何があったのか聞いてもいい…?」

「どうしても聞きたいから、わたしを連れ出したんでしょう?」

「それももちろんあるけど、ガッちゃんと二人きりになりたくて我慢出来なかったの」

 

 新垣はピタリと一瞬立ち止まったが、瞳は覗かないでという様子で俯いたまま再び歩き出した。

 

「本当は気持ちの整理がまだ出来てないから、トッティーにも誰にもあんまり話したくなかったんだけど、二人きりだからここだけの話として聞いてくれる?」

「…うん、わかった」

 

 新垣は歩きながら数日前の出来事を話し始めた。

 

 

****

 


 昨日会社で行われたクリスマスパーティーも無事に終わり、経理・財務部まで会計報告書を提出しに行った帰りの廊下で突然声を掛けてきた相手を見たわたしは、最初自分のことを呼んだのかどうかわからなかった。

 

「すみません、今から少しお時間よろしいでしょうか?」

「えっ? わたしに言ったの?」

「はい、新垣さんが経財部に入っていくのをちょうど通り掛かりに見つけたのでお待ちしてました」

「要件は何? 仕事中だから仕事の話かな?」

「場所を変えて、お話しさせてください」

 

 社内では挨拶を交わし合う程度で、ほとんど接点のない波瑠ちゃんから何の話をしてくるのか全く見当もつかなかった。

 しかし彼女の有無を言わさないような強い言葉の響きと意思に当てられるように、渋々と後ろについて歩き、その階の空き会議室へと入って行ったのだった。