I want to share true love with you. (3) 完 (オフィスラブ)

I want to share true love with you. (3) 完 (オフィスラブ)


*現実の方々とは無関係のフィクションの世界です。

*本文の無断複製・転載等行為を禁じます。

 

「額の傷も何もかも全部癒えてるんだから、紗季ちゃんが負目を感じることはないのよ」

 

 羊さんは努めて明るく話しているが、わたしの頬に片手を添えて宥めるように動く手が微かに震えているのが見えた。

 

「でも、あなたの素行を悪くさせてしまったのはあの日が境だったのに、傷つけてしまったわたしが先輩を強く求めるなんて出来るわけないです!」

 

 長年抱えている真情を吐露するわたしは可愛くない女だと思った。

 

「紗季ちゃんはわたしを好きになったことを後悔してるの?」

「後悔はしてません…ただ、先輩を…羊さんを正直に求められないのが本当に…辛い…いつも目の前にいるのに、愛しているという気持ちを何度も何度も鎮めて、隠し続けているのがどんなに辛いか…あなたはわからないでしょう!」

 

 わたしの言葉を聞いた羊さんの顔は苦渋の色を浮かべている。

 本当はそんな顔をさせたいわけじゃない…しかし、わたしは今までと変わらずにここで甘い顔を見せてしまってはいけないと歯をくいしばり、あの日変わってしまった羊さんに気持ちが伝わるように、ただひたすら今のままでは心が辛いと訴え続けるしかなかった。

 

「あたしが今までしてきたことは間違ってたの……? ただ、紗季ちゃんに誰も近づいて欲しくないと思っているだけだし、あなた以外の誰一人として本気で愛そうなんて考えたこともないんだよ…」

 

 淡々と語る羊さんは、随分とドライな一面があることを知ってる人があの会社にいるのだろうか?


「わたしに近づかない代わりに、たくさんの女の子は人当たりの良い羊さんが大好きなんですよ。里帆ちゃんだって羊さんのことが大好きで惚れているって知ってるんですよね?」

「もちろん知ってるよ、でもねそれでいいんだよ。紗季ちゃんをそういう目で見ていないってわかるだけで心底安心するし良い子だねって褒めてあげたくなるの」

「羊さん…お願いだから、そんな歪んだ愛し方はやめてください!!」

 

 四つん這いで見下げている羊さんに両腕を伸ばして、背中を引き寄せて掴まえるように腕の中に抱えた。

 

「紗季ちゃん…」

 

 羊さんの心音がドクドク鳴っているのが聞こえてくる。

 次に何を言われるのか、もしくは拒絶されるかもしれないと、不安と恐れが入り混じって緊張しているのだろうか。

 そんな要らない緊張なんて吹き飛ばし、わたしの心音がきちんと届くようにと願って、想いを伝えていくことに決めた。

 

「自分に誰が近づこうと今度は間違った断り方は絶対しないし、羊さんを誰よりも愛しているのは自分なんだって堂々と主張したって構いません。もう他の人に愛想を振りまいて遠ざけるなんてしなくてもいいようにわたしがあなたの全てを包み込むように愛していきます…」

 

 こんなにも熱い告白なんて今までしたことなかったのに、次から次へと正直な想いが溢れてしまう。


「…ねえ、紗季ちゃん」

「なんですか?」

「それってプロポーズなの?」

「プ、プロポーズってそんな深い意味合いで言ったわけではなくてですね…ただ普通の求愛なんだと思います!」

「紗季ちゃんって上手に誤魔化せない子だよねー、そういうところが信用できるポイントの一つなんだけどさ」

 

 苦しい言い訳だなって自分でも誤魔化せていないとわかるくらい、羊さんのことが愛しくて膨らんでいく想いが抑えられなくなっていた。

 

「あの、吉田先輩…もう一度出会った時の憧れ始めた付近からやり直して、わたしと付き合ってくれませんか?」

「そうねぇ、その吉田先輩って呼び方以外は全てOKなんだけど…それとも、その呼び方の方が好きなの?」

「ひつじ先輩?」

「それも紗季ちゃんはやめてよ~からかうのにわざと言ってるでしょう?」

「羊さんに憧れ始めた頃の自分を思い出したら、その呼び方になってしまうんですけど」

「ちゃんと名前で呼んで欲しい」

「羊さんが一番好きですよ」

 

 羊さんは体を離して起き上がり、わたしにも起き上がるように手招きしているので、体を起こしたら再び抱きしめ合うのだった。

 


 普段はクールな感じの紗季ちゃんが、暑苦しいほど情熱的なのがわかって嬉しかったと言ってくれた時の優しい笑顔を忘れないように、ずっと愛していきたいです。

 


****

 


…後日。

 


「いや~モテる女はツライねー、デートのお誘いこんなに貰っちゃった♪」

「…羊さんのそれは根っからの性分だったんですね…では、お付き合いの話は無しということで、ナンパでもなんでもどうぞ」

「えーっ! ほんじゃ、紗季ちゃんと毎週デートするって言ってもいいなら、みんな断って来るね♡」

「それはさすがにオープン過ぎるのでやめてください」

「紗季ちゃんが堂々とあたしの恋人だと主張するって言ってたじゃないの、忘れちゃった?」

「はて? わたし達、いつから恋人になりましたっけ?」

「きちんと断って来まーす」

 

 もうしばらくの間、この不安定な関係が続いていくんだろうなと密かに思うのでした。


終わり。