First Love Christmas

First Love Christmas (大澤木元)

 


 昼から二人で大量の料理を作り、事前に購入していたシャンパンとワインをオシャレなデザインに惹かれて購入した二本用のワイン&シャンパンクーラーに入れて、テーブルの上にセッティングした。

 料理も大き目のお皿に盛っていくが、この量を食べるのは主に彼女の方だし、大体のメニューは彼女の好物を用意するくらいに、わたしは木元を溺愛してしまっているのだった。

 

 彼女は気がついているのだろうか?

 わたしが初恋というのだから、気がついていない可能性が高い。

 好きな人のことだけを考えて作った数品。

 彼女が作ってくれた料理はわたしには難易度が高くて作れないものが数品。

 家事はどれも得意ではないけど、あなたが美味しそうに食べてくれるから、普段は億劫でもイベント毎は特別に張り切って頑張ってしまえる。

 わたしは木元だけに特別な想いを込めて、特別扱いをして、誰にも見せないような優しさと愛情を注いでいるのだから、あなただけだと気がついて欲しい。

 

「ねえ、もう人間に興味が無いなんて言わないでしょ?」

「えっ…いきなりそんな質問をされるとビビりますよ」

「木元と最初の現場へ行った日のことを思い出したの」

「…人間に興味があるようになったわけではなくて、関心を持てる人間が現れたことで見える世界が広がったので、わたしはただその人を目標にしているだけなんですよ」

「木元の心を動かすような強烈なインパクトのある人が現れたってことか…いつか、その目標の人を超えるような人物が現れたら、あんたはどうするの?」

 

 準備の途中で手を止めたわたしは、核心を突くような質問を木元へと投げかけた。

 木元はしばらくの間、思考させて欲しいという意味なのか、わたしの方へ少し待ってくださいと手のひらをかざすように向けて、瞳をそっと閉じた。

 

「木元は将来的にわたしを超えることが出来る逸材だと思っているのよ~賢いし、強くなってきているから頼もしいしねー」

 

 わざとらしく大きく褒めて、揺さぶりをかけて反応を見ていることに気がつくだろうか?

 

「大澤さんはわたしを買い被りすぎてますね…」

「そうでもないよ、この三年余りという短い期間でも、木元はあのメンツの中じゃあ一番成長が著しい、根拠はあるから」

 

 瞳を開いて見上げるその表情は、今まで見たことがないような穏やかな眼差しを宿して優しい微笑みを浮かべていた。

 

「ありがとうございます。先ほどの質問の答えを申し上げますがよろしいでしょうか?」

「何よ急に改まっちゃって…まあいいわ、教えて」

「来年も再来年もそれからずっと先の未来も、どんなに目標を超えるような人物が現れようと、わたしは大澤さんが一生の目標ですし、強く関心を持てる人間はあなた一人だけですから、揺さぶりなんてかけなくていいんですよ」

 

 木元は想像している以上に、ステップアップして成長しているのだと気がついた。

 わたしがどんなに突き放そうが追って来てくれるだけのバイタリティは若さ故のことなのか、それともわたしへの真愛なのか、その答えは先ほど言ってくれた言葉に込められているのだろう。

 だからわたしも木元の気持ちに想いを重ねていきたいと思った。

 

「木元、ありがとう。さあ、料理を温め直してクリスマスのイベントタイムを堪能していくよ」

「はい! ワイン&シャンパンクーラーの氷も追加してきますね」

「オーケーよろしく」

 

 テーブルに並べた大量の料理を一つ一つ口へと運んでいく木元は「お世辞抜きで美味しいですよ」と言ってくれるものだから、「木元がお世辞なんて今まで言ったことあったっけ?」と言い返してみるのだ。

 

「そういう時は正直に木元のためだけに作った甲斐があったわ、とか言ってください」

「uh huh. そんなことわたしに言わせるには十年早いから」

「それだったら、敢えて言わなくてもいいですよ」

「そういうとこ、可愛くないねー」

 

 腕を伸ばし、木元の頬を指先でひと撫でして、くっつけているケチャップを取ってあげた。

 紙ナプキンで指先を拭うと、少し不満そうな表情を浮かべている木元を見て疑問符が浮かんだ。

 何か気に障ってしまったのだろうかと一瞬考えたが、気難しい部分がある木元のことだから何も言わずに頬を拭うなんて嫌だったのかもしれないと思った。

 

「ご馳走さまでした、次はクリスマスケーキを食べましょう」

「あんた休憩も無しでデザートを食べるわけ?」

「大澤さんだって休憩も無しでお酒を飲んでいるじゃないですか、それと同じ原理ですよ」

「木元の異次元胃袋と同じにされるってどうなのよ…」

 

 複雑な面持ちのまま、冷蔵庫へとケーキを取りに行くと木元も後ろについてきて、デザート皿とフォークと包丁を運んでくれた。

 木元用の4号サイズのクリスマスケーキを一つと、二人で分けて食べる用のブッシュドノエルを箱から出し切り分けてデザート皿に盛って手渡した。

 クリスマスケーキをフォークでもくもくと食べる木元に、ブッシュドノエルを一口分すくって口元へとあーんと言って食べさせてあげたら、照れ臭そうに瞳を逸らしてから俯いて自分のケーキを頬張る姿はちょっと可愛かった。

 

「やっぱりデザートは最高ね」

「大澤さんも片桐さんに負けず劣らず甘い物が好きですもんね」

「あいつには負けてるから、量は少なめでいいの。あっ木元、頬に生クリームが付いてる」

「どっちですか?」

 

 わたしは事前に付いていることを教えたのだから今度は不満は出ないだろうと思い、同様に頬を拭ってあげて指先に付いた生クリームをペロッと舐めた。そしたら、今度はフォークをテーブルへとカランと音を立てて落とし、両足を椅子の座面に乗せて体操座りのように膝を抱えて顔を隠してしまう木元が見えた。

 

「な、何よその反応は、突然どうしちゃったの?」

「お…さわ…んの…ゆび……しい………」

「えっ、今何て言った?」

「おおさわさんの指が欲しくて堪らなくなってしまうじゃないですか…もうやだ…」

 

 膝から顔をあげた木元は頬から耳まで真っ赤にさせて、目を潤ませてわたしを睨みながら震えるような声を上げた。

 

(そうか!ケチャップの時は紙ナプキンで指先を拭ったからあの反応か…)

 

 木元が可愛すぎて我慢が出来なくなりそうだった。

 

「木元、早くケーキを食べなさい…生クリームよりも甘いデザートが食べたくなったから」

「こんなになるの…あなただけですよ…」

 

 木元の初恋で最初のクリスマスは彼女にとって特別な日になるようにと願って…

 わたしは目一杯の愛情を木元の心へと贈った。

 


終わり。