オフィスラブ キャラクターリレーSS ② (前編)

オフィスラブ キャラクターリレーSS ② (前編) (比嘉さん→波瑠さん)

 


*現実の方々とは無関係のフィクションの世界です。

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 寝起きのぼんやりした頭で休憩室を後にする紗季ちゃんに手を振って見送り、もう片一方の手が隣に座る新垣と繋がっていることにようやく気がついて、ちょっと照れてしまう。

 

「わたしと手を繋ぐって珍しいね。もしかして寂しくさせちゃった?」

「べ、べつに寂しくないし、妬いてないんだよ…」

 

 プイッとそっぽ向いても頬がほんのり膨れているし、小さなヤキモチを隠せていないとわかっていないのかなって、そんな無意識に照れ隠しするところも大好きだ。

 

「好きなんだけどね~結衣ちゃん」

「ふーん、愛未が相武さんとあんなに仲良かったなんて知らなかったなぁ」

 

 先ほど緩んだ心持ちで紗季ちゃんに甘えていた姿が気に障ったのか、目覚めるまでに二人でわたしの事でも話していたんだとしたら腑に落ちる。

 

「もう十年前かな? わたしが最初に配属された法務部で一番仲良かった先輩が紗季ちゃんだったの」

「そっか、思い出した! 仕事が辛いから辞めたいけど相武さんが憧れだからまだ頑張りたい!って、わたし達が仲良くなった頃お酒飲んで毎回熱く語ってたよね」

 

 なんだかわたしの恥ずかしいことをばかり覚えていそうな新垣に、他の人には言わないように釘を刺さないといけない様な気がした。

 

「それで、紗季ちゃんがコーポレート部門から営業部門に同期と同時異動が決まったって聞いた時、ワンワン泣いて自分もついて行くって縋り付いて伝えたら、いつか一緒の部署で働けるように成長して愛未ちゃんの隣に帰ってくるよ! なんて言ってもらえたらめちゃ好きになるってもんだよ」

「そっか…今も好きなの?」

「今は結衣しか見えないし、いつどこにいても忘れたことがないよ」

 

 繋いでいる手を両手で包み込んで握り真剣な面持ちで新垣を見つめると、あわあわと動揺して口許を震わせながらギュッと瞳を閉じたが、突然新垣のスマホの着信を告げる通知音が流れて、ごめんと手を離して直ぐに電話に出た。

 通話相手と話している結衣の心配そうな声から、今晩の夕食は一人になりそうだと予想できるのだった。

 

「愛未ごめん、同期の子が具合悪いみたいで、今からお家へ行ってあげようと思って…」

「わたしはいいから行ってあげなさい。また次回ご飯行こう」

 

 もう一度ごめんと言って、新垣は休憩室から慌てて出て行くのだった。

 

毎回ビシッと決まらないのはどうしてなんだろう。

戸田だったらこういう時は心配だから自分もついて行くと言って、新垣の手を取って駆け出しながら励ましたりするのだろうなと、ここに居ないのにも関わらず同期という距離の近さを感じさせるとは、負けてるみたいで悔しくて唇を結んで膝をドンッと叩いた。

 

 休憩室を後にしてエレベーターに乗って一階へ降り、俯き気味にエントランスホールを歩いていると、誰かと接触しドンっと勢いよくぶつかったわたしは、

「きゃっ…ああぁっ!!」

「あっ、危ないっ!」

 後ろに倒れそうな体を、背後からやって来た人物によって咄嗟に抱き止められるのだった。

 キュッと閉じていた瞳を開くと、なんとか間に合ったと安堵した表情で見下ろしている波瑠ちゃんが見えた。

 

「愛未先輩、お怪我はありませんでしたか?」

「あ、ありがとう波瑠ちゃん…わたしは怪我してないけど、向こうはどうだろう」

 

 尻餅をついただけだから大丈夫だったという男性社員に頭を下げて謝り、向こうも余所見していたと謝ってその場をお互い後にして行くのだった。

 エントランスホールの隅に移動して、改めて波瑠ちゃんに向き合い、お礼を言って助けてくれたご褒美をあげると頭を撫でてあげた。

 ニコッと笑って、どう致しましてとはにかむ波瑠ちゃんがとても可愛かった。

 よかったら御礼に食事をご馳走したいと言うと、顎に指を添えてうーんと一瞬考えた後、一旦部署に戻って外回りの報告だけしてくるので少し待っていてくださいと言って急ぎ足で上へと向かう姿を見送り、エントランスホールの待合用のソファーに腰掛けて波瑠ちゃんを暫し待つことになった。

 

 じつは、波瑠ちゃんも紗季ちゃんと同様に、一時期の間、法務部に在籍していたのだ。

 なんでも、彼女は新人研修後に全治一か月の大怪我となる事故に遭ったとの話で、食品経営企画部に配属予定だったのが、社内でも極めて忙しい部署に病み上がり直後の配属は酷だろうと上層部からの優遇措置を受けて、法務部へと時期遅れで入って来たのだった。

 

(そういえば、波瑠ちゃんは事故直前のひと月程くらいの記憶がほとんど思い出せないと話していたんだよね…今はどうなんだろう)

 

 会社内では時折顔を合わせて挨拶を交わす程度だったので、尋ねる機会がなかったのである。