オフィスラブ キャラクターリレーSS ①

オフィスラブ キャラクターリレーSS ① (相武さん→比嘉さん)

 

*現実の方々とは無関係のフィクションの世界です。

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 繁忙期に入ると会社内は残業する社員が増えて、自分もその中の一人だということが定時で帰れないこの現状が物語っていた。

 口に手を当てて欠伸をしているのは、眼鏡がトレードマークでお笑い芸人でもやっていけるくらいにカラッと明るくて話しやすい白鳥さんだ。

 視線を感じたのか見られちゃったと頭に手を乗せ照れ笑いながら、紗季ちゃんはクリスマスってどう過ごすのか決めてる? なんて今一番触れて欲しくない話題をサラッと振ってくるから返答に困った。

 

「クリスマスなんて会社の行事に強制参加ですし、お金ばかり出ていくシーズンで何も得することがなくないですか?」

「そんな冷めたこと言っちゃってるけど、損得じゃなくて~ほら、コレがいるんでしょう?」

 

 小指を立ててにこやかにウインクしてくる白鳥さんに、勘違いが無いように訂正しておかなければいけないようだと思った。

 

「誰のことを言ってるのかわかりませんが、浮いた話なんて一切ないですから、クリスマスは家族で過ごすと言っておきますね」

 

 そうなの?と、わたしの返事を大体は予想していたのか、気にするそぶりを見せずに他の同僚にも同様の話題を振っているのだった。

 今晩は少々長くなりそうだと周りの空気から感じて、一息入れに行こうと出入り口まで歩いてオフィスの扉の取っ手へと手を伸ばした瞬間にガチャッと扉が開き、驚いて一歩身を引いた。

 

「おっ、紗季ちゃんもこれから休憩しに行くの?」

「吉田先輩のサボりと一緒にしないでください」

「こらこら~、その呼び方はやめなさいってもう何年も前から言ってるでしょう」

 

 腰に片手を添えてムッと怒っている羊さんを特に恐いと感じないのは、このやり取りに慣れてしまったのだろう。

 片手に持っている可愛らしい便箋の束を目敏く見つけて、こちらもツッコミを入れて煽っていくことにした。

 

「へぇー、そのラブレターの束にクリスマスデートの誘いや甘い言葉が書かれているんですよねぇ、羊さん」

 

 あちゃー紗季ちゃんにはバレてるわー! と苦笑いをしている羊さんの横を通り、メディカル部のオフィスからさっさと出ていくのだった。

 

どうせ後々断るんだったら良い顔して受け取らなければいいのに…

クリスマスは家族で過ごすなんてfakeだ。

 毎年約束なんてしていないのに、出逢った時から彼女はうちへやって来るし、わたしもその日は予定を入れることはなかった。

 階段を黙々と上って何階に着いたのか確認もせずに、その階の休憩室に入ってサッと見渡していると、入り口から奥まったところにある座り心地の良いソファーで居眠りをしている友人を見つけるのだった。

 

(あの子は意外と無防備なんだな…起こすべき?)

 

 カップコーヒーを購入し、気持ち良さそうに眠っている友人を起こさないよう気をつけて隣に座り、スマホのアプリを開いて見始めた。

 彼女は疲れているのか、ソファーの背もたれに頭を乗せていたところからコテンッと船をこぐように今度はわたしの肩に頭を乗せて、すりっと頬を擦り寄せてくるので目を見張った。

 

(この子こんなのでホントに大丈夫なの…?男だったら襲ってるレベルなんだけど)

 

 友人の身を案じながらしばらくの間コーヒーを飲んでいると、休憩室に新たな人物が入って来てソファーの正面まで進み立ち止まって、ハッと息を飲む音が聞こえてきたのでわたしも目視で咄嗟に観察した。

 わたしの肩に頭を乗せて無防備な姿勢で眠っている愛未ちゃんとわたしを交互に見つめるその瞳の奥には、うっすらと嫉妬心を宿しているみたいだと直感的に思った。

 

「この子、新垣さんと待ち合わせ中だったの? わたしが休憩室に入って見たら既にぐっすり眠ってたんだけど」

「…あ、そうなんです。先に終わったからここにいるよって連絡があったので…こんな無防備な姿で驚かれましたよね?」

「うん、男だったら襲ってるだろうなぁとか思って心配してたよ」

 

 新垣さんはわたしとは反対側の愛未ちゃんの隣に座り、そっと彼女の手を取って見えない位置で手を繋いでいた。

 わたしに遠慮することなく愛未ちゃんを起こして仲良くしてくれてもいいのにと思ったが、戸惑いながら額に片手を置いて悩ましい様子の新垣さんの姿に疑問符を浮かべるしかなかったが、彼女の次の質問によってわたしに向けた感情の一端が見えてくるのである。

 

「相武さんがもしも男だったら愛未を襲っていましたか?」

「襲ってないよ。でも、男じゃなくても愛未ちゃんのことが好きな人ならキスくらいはしてたかもね」

 

 こちらに顔を向けてキュッと口を結び何か含むところがあるのか、物言いたげに睨みを利かせて来ているのは意識的なのだろうか? たとえ意識していなくても自分に嫉妬心を向けても何も意味がないことを教えてあげないといけないのだった。

 

「あのね、わたし一応本命さんがいるし、愛未ちゃんにキスして奪ったりしないから安心していいよ」

「えっあの、そんなつもりで聞いたわけではなくて…わたしの本命はまだ…」

「うー…なーに…? あ、紗季ちゃんと結衣…ん~?」

「おはよう、愛未ちゃん。あんまり無防備だと本命さんが妬いちゃうよ」

「相武さん!?」

「本命さんって誰のこと? あっ、紗季ちゃんの本命! 大好きな先輩とどうなったっけ?」

「それは進展ないからご心配なく。それじゃ、お邪魔しました。愛未ちゃん、また今度よかったらお茶しよう」

 

 手を繋いだまま動揺して頬を染めている新垣さんと、未だに若干寝ぼけているのかポワンとした顔で手を振って見送る愛未ちゃんを残し、休憩室を後にしてオフィスへと歩き始めた。