I want to share true love with you. ⑵ (オフィスラブ)

I want to share true love with you. ⑵ (オフィスラブ)


*現実の方々とは無関係のフィクションの世界です。

*本文の無断複製・転載等行為を禁じます。

 

 誘惑のような言葉に乗ってきたのか、羊さんはわたしをソファーに押し倒して唇を重ねながら逃さぬよう背中に腕を回してきた。

 キスに夢中になったわたしの手から空になったグラスが絨毯の上に静かに落ち、それを合図に羊さんは上半身を弄り始めて、わたしの胸の柔らかさを堪能するように頬を擦りよせてきたりと、お酒の酔いに任せて好きなように攻めている様子だ。


今日はわたしも(彼女に)酔っているのだろうな…と、ぼんやりしながら思った。


 きちんとした形では付き合っていないのに、羊さんと交わる行為はお互いの家を行き来して数えきれないくらいしている。

 それなのに、どうしてきちんとお付き合いをしないのかと問われたら、彼女の歪みが入った独占欲を受け入れたくないとどうしても心が拒絶してしまうからだろう。

 

 軟派な表の彼女は、女性社員には次々と声を掛けて意識を逸らし、男性社員は饒舌さをフル活用して蹴散らして追い払っていく。

 そう、それはわたしへの意識を一切向けさせない為のパフォーマンスらしいのだ。

 

歪みから生じた重すぎる愛。

そんなことをわざわざしなくても、わたしはあなたしか見えていないのに。

 

 囮になって外敵を遮断するなんて、恋愛も多様化してる現代では要らない行動だと言ってもおそらく聞いてはくれないだろう。

 ただ、誰よりも愛しているけれど、ふらふらしているあなたの彼女なんて御断りだ…

 どうして好き同士なのに、回りくどいことをしたり、わたしは内に秘めた愛情を隠し続けないといけないのか…


 彼女が変わってしまった大きな原因が数年前の過去にあった。


****


 今の部署へと配属されてから先輩である羊さんと出会い、自分と同期配属となった二人を加えた三人を同時に余裕で指導できる程の優秀な人物であり、仕事が早い上に丁寧且つ記憶力が並外れて高くて社交的で非の打ち所がない天才肌な羊さんが憧れの先輩になるのは必然的だった。

 いつも後ろを離れずについて回り、同期の誰よりも早く仕事を覚えて吉田先輩に褒めてもらえた瞬間に仕事のやりがいを感じた。

 

「吉田先輩、宣伝用のプランをいくつか考えて来たのですが、見て頂いてもよろしいでしょうか?」

「おっ、見せて見せて。ほ〜うんうん、どれも面白くて選ぶのを迷ってしまうね」

「迷うくらい決定打が無いということは、何か足りないですか?」

「そうねー、商品を売りたいという気持ちはどれからも感じるんだけど、消費者がグッと食い付くような面白いだけじゃないアピールポイントが欲しいね」

「アピールポイントですか…うーん、ううーん」

「これから考えるコツを教えてあげるし、あんまり一人で考え過ぎなくてもいいから、気楽にいこうよ、相武さん」

「はい先輩!よろしくお願いします」

「うん、いい笑顔だね」

 

 それから、仕事の先輩としての憧れから密かな恋心を抱くようになった頃だったか、先輩からプライベートの時間を共有する誘いが徐々に増えていった。

 仕事後に飲みに行ったり、オフも連れ立って映画を観たり外食したりと、周りの同期とは違い明らかに先輩との距離が近いのだと部署内外問わずの人間に自慢したいくらい浮かれていたみたいだ。

 

 そんなある時、わたしが他部署の先輩から告白を受けている場面に偶々先輩が出くわし、口論に発展して逆上した告白相手からの暴行を庇うように傷を負った先輩が、救急で運ばれる騒ぎとなったその後、先輩の素行が悪くなって関係が一変してしまうのだった。


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 首筋に顔を埋めて口付けたり吸い付いたりと性急に求めてくる体を押して止めたら、どうして止めたの?という羊さんの困惑を露わにした表情が見えた。


「吉田先輩…あの時受けた傷が未だに癒えていないんですか…?」

「…っ!!その呼び方はもう絶対やめるようにって言ったことを忘れたの?」

「忘れていません…わたしの所為で傷を負った先輩に、あの日からも変わらずに好意と罪悪感を同時に抱えているんですよ…忘れることが出来たらどんなに楽になるのでしょうね…」

 

 ソファーの上で、四つん這いの格好でわたしを見下ろす羊さんに、抱えている想いを吐露してしまうことを止められそうになかった。