続々・その出張、異議あり!(パラレルオフィスラブ)

続々・その出張、異議あり!(パラレルオフィスラブ)

 

*現実の方々とは無関係のフィクションの世界です。

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「恵梨香がわざわざ天海さんの部長室まで入って直接異議を唱えて門前払いされて、お見合いとかそういった秘密裏に進めていることも無いって言ってくれてるんだし、同行しても問題ないんじゃない?」

「大問題やから!天海さんにガッちゃんが襲われて美味しく食べられてもいいの?」

「よくないけど…そこよ、天海さん『が』じゃなくて『に』になるのがまずおかしいと思うの」

「なんでよー、天海さんはガッちゃんのことを可愛がってる節があるし、この前だってガッちゃんの頭を撫でたり抱き寄せてたからすっごく頭に来て、触らんとってくれます?って思わず天海さんに言ってしまったくらいなんだけど」

 

 恋人に浮気される心配より、親友が寝取られる心配の方が戸田の中でも大きな問題点なのだから、随分と拗れているのだと察して、新垣の気持ちを考えると複雑に思わずにはいられないのだった。

 

「…それに…結衣は…天海さんのことが好きみたいやし…」

「……へっ? い…いま、結衣は天海さんのことが好きって言った?」

「…うん…天海さんにされるがままでこれっぽっちも嫌がんないし、今までだって仕事が丁寧で対応も良し!とか褒められて、頭撫でて貰えたってニコニコ上機嫌だったり、よくよく思い返してみると憧れている様な反応してたんよね…」

 

女性社員の多くはみんな天海さんに一度は憧れを抱くんだよって教えてあげるべきか…

あの子もバレンタインは一緒にチョコを買いに行ってあげてるよって言えば余計に混乱するかもしれないし…

そもそも結衣は恵梨香のことがすごく好きって気が付いて、失恋したことがショックで号泣してた筈だけど…

 

 目の前の親友だけじゃなく、もう一人の愛しい親友も拗れた恋心を抱いている可能性があるのか、それとも戸田が誤解しているだけなのか、ここまで見聞きした情報だけで理解することは困難だった。

 

「ここまでの経過を見て聞いた感じでわたしの考えを述べると、結衣が天海さんを取っちゃうってことも、天海さんが結衣を美味しく頂くことは無いと思うよ」

「その考えに根拠はないよね?」

「あるよ」

「それは、何?」

「二人共、恵梨香のことを愛しているからに決まってるでしょうが…ったく、何でライバルのあんたに結衣の気持ちを代弁しなきゃいけないのよ」

「………? 結衣はこの間、わたしのことを特別な人だとは言わなかったじゃない、まなみもだけど」

「うるさいなぁ、あの返事を聞いたわたしの心境は複雑だったんだから、蒸し返さないでください」

「えー、結衣がわたしのことを愛してるとかまなみーが言うから、それは本人の本心とは違うんじゃないかって言ってるんですけど」

「…わたしの気持ちだってあるのに、ややこしくさせないでよ…」

 

 ひとつだけ確信したことがある、恵梨香は完全に結衣の気持ちを誤解してしまっているのだ。


(結衣は天海さんに憧れてるから自分には特別な想いが無いと解釈し、しかも自分は結衣のことを出会った時から一番隣で守って愛しんで大事にしてるのに、わたしと同列にされてるのも気持ちが高ぶってしまう要因となって、結衣の特別な存在になり得る天海さんは恋人として愛してる筈なのに妬いてしまうってことか)


 そこにわたしとの関係も絡んでくるから、恵梨香の誤解はずっと解けないまま…か。

 ライバルであるわたしが言ってあげられることはある程度決まっている。

 その誤解を直接解くことはせずに、結衣をややこしく縺れた愛〈いと〉から少しでも遠ざけるための手段を選んでいくのである。

 

「ごちゃごちゃ言ったりへこんでないで、結衣のことも恋人の天海さんのことも信じなさいよ!」

「おおっ、まなみーって時々男前にビシッと言ってくれるよね、そういうところすごく好きだわ」

「それはどうもありがとう、って、これで終わりでいいよね?」

「ううん、終わりちゃうよ」

「…はい?」

「出張に着いて行く手段とか、ガッちゃんを行かせない方法とか助言してくれへんかな~」

「この…お調子者の軽薄者~」

 

 ここに来てから真剣に考えているこちらの気持ちを蔑ろにするような悪い子には、お仕置きをすることにしている。

 

「あだだだっ!!いひゃいいひゃいっ、痛いからもう!まなみ、またつねったし…ほっぺが伸びちゃうから勘弁してよー」

「勘弁して欲しいなら、出張案件はすっぱりと諦めることね」

「むーっ、やっぱりガッちゃんの旅行鞄に入って、こっそり着いて行くしかないんかなぁ」

「ぷっ、何よそれ。…まあ、方法がないことはないけど…」

「なになに?!まなみサマ、助言をお願いしまーーす!!!」

 

 両手を合わせてちょこっと顔を斜めに傾けて、ニコニコ顔でおねだりする様なポーズの戸田は、悔しいけど様になっていて、とても可愛いのであった。