続・その出張、異議あり!(パラレルオフィスラブ)

続・その出張、異議あり!(パラレルオフィスラブ)

 


*現実の方々とは無関係のフィクションの世界です。

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 プライベート用のスマホにしつこいくらいの着信があったのは夕刻を過ぎた辺りで、後は書類の整理をして定時で上がれると思った矢先だった。

 オフィス内にあるカフェに彼女から呼び出されてからというもの、三十分くらいは今日に至るまでの近況報告と半分惚気と拗れた恋愛話を一人延々と喋っていただろうか。

 彼女は喜怒哀楽の表情をこれでもかというほど正直に表すので、意思表示が分かりやすく親友として接していく上でも裏表がない性格は非常に気に入っているが、喋り疲れたのかへこんでいるのか、どちらにも取れるような姿でテーブルに突っ伏している戸田を見つめて、壮大な溜め息をついた。

 

「はぁー…あのねぇ、二つほどツッコミ入れてもいい?」

 

 テーブルからパッと顔を上げた戸田はニッと笑みを浮かべている。

 

「あっ、ツッコミだったらわたしの方が得意だから!」

「そんなことで関西人気質燃やして張り合わないの!」

「まなみが天海さんと似た感じの返しをしてる…じーっ…」

「ジト目でじーっと見てないで、わたしの話を聞いて。ツッコミというか質問ね…まず一つは、女性社員に一番人気の天海さんに告白されて即OKしてお付き合い始めたって本当の話で本気なの?」

「うん、マジ話で、天海さんのことを本気で愛してるよ」

 

 真っ正面に座っている戸田は薄っすらと頬を染め、照れながらもしっかりと愛していると伝えてくる姿に天海さんに本気で惚れているという事が分かった。

 それはとても喜ばしいことだと思った。

 仕事第一で男勝りで美人でモテモテのあの天海さんが、戸田のような素直で気が強めではっきりと物申すけど本当は繊細で優しい彼女に惚れるのは意外なことでもない。

 

まあ、わたしも毎年恒例でバレンタインにチョコレートを贈るくらいには天海さんに憧れていたんだけど。

もちろん本命は、可愛すぎて溺愛してしまうくらい愛しの結衣なのである!!お家に連れて帰って撫で回したい~!

隣に座ると控えめに付けている香水の優しい香りに嗅覚を心地よく刺激されたり、一緒に飲みに行って酔いがまわると何度押し倒したくなったものかと…

 

「ストップ!まなみーの心の惚気は長いからいらない」

「勝手に人の心を読み取らないでよね」

「途中から口に出してたやん!というか、天海さんに毎年恒例でバレンタインチョコ渡してるんはウケるわ~めっちゃ面白いからガッちゃんにも教えよっと」

「やめて、ウケないで、教えないで」

 

 戸田はわたしが本気で嫌がることはしない子だけれど、新垣の名前を出す時は信用に欠ける部分があるから要注意だ。

 

「あ、ちなみにわたしは毎年ガッちゃんには愛情を込めた手作りのお菓子をあげてるから、まなみーの負けね」

「ふんっ、恵梨香は来年から愛する天海さんにだけ愛情を込めて作るんだから、本命のわたしが勝つに決まってるでしょ」

「へぇー、そう、それは楽しみやね~」

「恵梨香のその言い方、ムカつくわ~」

「ひゃっははは、余裕だもんねーー」

 

 笑い上戸で余裕たっぷりな戸田の一面に苦笑いで遇らうしかないのが辛いってつくづく思う。

 

本当は知ってるんだよ。

結衣は無意識のうちに恵梨香に特別な物をあげてきていたことを…

あの子が自身の恋心に気がつかなければよかったのにと思ったり、ずっと二人は親友というラインを平行線で歩き、わたしが温めてきた愛しい想いを誰よりも先に伝えたかった。

恵梨香に惹かれてその優しい手に引かれて、いつか見えないところで二人は結ばれるんじゃないかって憂慮しているとは誰にも言えない。

 

 だからわたしは戸田が天海さんとお付き合いしていることに喜びと少なからず期待を感じるのである。

 

「もう一つ、わたしに対して余裕があるわりには、天海さんが出張で結衣を連れて行く件で重くへこんでいるのは何でなの?」

「だってさ、あの天海さんがわざわざ出張で総務部の看板娘と言われているガッちゃんを同行されるっていうのは、何か裏があると思うじゃない?」

「まあ、確かにあの子はあの部署では特別な箱入り娘的なところがあるし、裏がありそうだと思ってしまうのはよく分かるね。あとそれとは別で、恵梨香が入社と配属してから目を光らせて上司同僚同期後輩問わず悪そうな輩を追い払ってくれていたのは知ってるけど…」

「あら、よくご存知ですこと」

「あんたの分かりやすい番犬よろしくな噛みつきを、何度も目撃してきたんだから当たり前だし。それよりも今は出張案件の話を整理しよう」

「せやね、まなみーはどう思う?」

 

 その真っ直ぐで、ライバルであるはずのわたしにも物怖じせず相談を持ちかける戸田と同様には自分じゃ出来ないなと、心の中で自嘲気味な笑いが溢れた。