ひとりじゃないよ (中編) (パラレルオフィスラブ)

ひとりじゃないよ (中編) (パラレルオフィスラブ)

 

 

*現実の方々とは無関係のフィクションの世界です。

*本文の無断複製・転載等行為を禁じます。

 

 

 

「釣り合ってないって恵梨香とそのお相手さんのこと?」

「そうなんだけどさー、本人じゃないのにどこまで話していいのか悩み中」

「そうねー、お相手の話と恵梨香の気持ち云々は本人に会った時に詳しく聞くから、わたしは結衣が泣いてた理由がなによりも知りたい」

「それは…さっき言ったように、寂しかっただけというか…」

「寂しかっただけではあんなに大号泣して洪水みたいに涙流さないよ、あれはまるで、失恋の泣き方ってところね…」

 

 ズバリ当たっているから誤魔化せないし、いざ自分以外の口から失恋という言葉を聞くと、現実を突きつけられているようで胸が痛み出して、涙の影が再び湧き上がってくる。

 

「…告白されてOKしたって聞いて…あの子のことすごく好きだって気が付いた…だからもう何もかも遅いんだ……うぅぅ…」

「結衣、ごめん、また悲しかったことを思い出させて、本当は話したくなかったよね…」

「ぁぅ…ううん、わたしもひとりじゃもっと苦しくなってただろうし、愛未が居てくれて聞いてくれて良かった…」

 

 悩ましげに瞳を泳がせていた比嘉は、わたしの言葉を聞いて口元を緩めてふわっと笑顔を浮かべた。

 わたしの頬へと手を伸ばして流れた雫を拭い、それから口元に付いていた米粒を取って『いただきっ』とパクっと食べるものだから、突拍子もない行動をする彼女に自然と笑いが込み上げてきた。

 

「ふっあははは、愛未って時々突拍子もないことするから、可笑しな人だね」

「可笑しくないって」

 

 止まっていた箸を動かしてご飯を食べ進めていく。

 大泣きして笑い、泣いてまた笑って、こんなありのままの姿を見せても自然体で接してくれる比嘉は、わたしにはかけがえのない存在なのだと実感していた。

 

「そうそう、そうやって笑ってる時の顔が一番可愛いし素敵なんだよ、結衣は」

「そんな素敵なんて言われると照れるし、泣いて目が赤くなってるから目は見ないでいいよ」

 

 社員食堂は活気で溢れていて、自分一人が泣いていたって誰も気がつくことはない。

 むしろ、一人で泣きながらご飯を食べる姿は滑稽に映るだろうから、親友の前だからこそ緩んでしまったのだろうと思う。

 わたしはお礼の気持ちを含めて、二人分のお茶を取りに食堂設置の飲料コーナーへ行き、席へと戻るとそこに戸田が座っているので、ビックリして持っているお茶をひっくり返しそうになった。

 

「ちょっと、何でそこにいるの!?」

「おっ、ご苦労さま。ちょうど喉渇いてたから助かるわ~」

 

 持っていたお茶を戸田にひょいっと取り上げられてしまい、その上どうぞと比嘉に渡すという行動に苦笑いで呆然と立ち竦むしかなかった。

 

「お茶うまー、あ!この唐揚げももーらいっ」

「恵梨香…って、待ちなさい、その唐揚げは!!」

「あーむ、もぐもぐ…ごちそうさま!ガッちゃんたらお残しはいけませんねー」

「ひどい…ラスト一個だけゆっくり味わおうと残してたのに…」

「やばい!もしかして、やっちゃった感じ…」

 

 比嘉とまったりと飲もうと貰ってきたお茶を取り上げられた上に、ラスト一個の唐揚げまで食べてしまった戸田に沸々と怒りが湧いてきていたが、わたしの代わりに怒ってくれる存在に気がついて、一歩踏み止まってお腹に一息入れて落ち着かせた。

 

「ひょっ…ひょっと…ふぁふぁひー!いひゃいいひゃい!!」

「まったくあんたって子は、わたしの大事な子を泣かせた罰よ!」

「えっ?」

 

今、比嘉が何か重要なセリフを言った様な気がする…

わたしは胸が一瞬ざわっと波打つ不思議な感覚を覚えた。

 

「痛い痛いって…まなみー、ほっぺをぎゅーっと力一杯つねることないでしょ!」

「わたし今さー、だいぶ怒ってるんだよ」

 

 まさかの様子で比嘉の怒っている姿に、戸田は戸惑いと決まりの悪さが混じった表情で、つねられて痛む頬をさすって撫でていた。