好きだと気がついたあなたとわたし (おまけ) (パラレルオフィスラブ)

好きだと気がついたあなたとわたし (おまけ) (パラレルオフィスラブ)

 


*現実の方々とは無関係のフィクションの世界です。

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 屋上から急ぎ足で総務部のオフィスに戻って自分のデスクに目を向けると、なんと驚くことに先程まで話題の中心になっていた愛しの上司が椅子に座っていた。

 新垣と繋いでいた手を離すと、何故か不服そうに頬を膨らませるから意味がわからない。

 そうなる理由が勿論あるのだとすると、自分のデスクに陣取る天海さんにあるとわかった。


新垣がわたしに妬かないように振る舞うのってすごく難しくない…?


 天海さんとの接触をすっぱりと断つのは物理的な問題で不可能に近いし、部署転属届けをわたしが出すのもちょっと考えすぎかと思うのである。


 屋上での気まずい空気に逆戻りしたが、お昼休憩時間は待ってはくれないと腹をくくり、修羅場のデスクへと足を運んで行った。


「ちょっと戸田~!あんたの大事なお昼の栄養分が、デスク周りのハイエナの群れに狙われてたんだけど」

「えぇっ、ちょっと皆さん、ご自分のお昼御飯があるじゃないの!」

「男性社員の連中からしたら、あんたのお手製に憧れがあるってところかしら」

「ふーん、別に普通のサンドイッチの具しかありませんがね。ところで天海さんはもしかして…」

「そのもしかしてで正解。お昼御飯を守ってあげたんだから、戸田にはたっぷり御礼をもらわないとね~」

「えっと、御礼は体以外で勘弁してくれます?」

「恵梨香さんたら、真昼間からナニをトボけたこと言ってるのかなー?」

「天海さんのノリに合わせるとこんなもんですよ、ねっ、正解!」

 

 わたしと天海さんのやりとりを見ていたデスク周りの同僚は、皆可笑しそうに笑っている。

 しかし、新垣ただ一人だけは、瞳を逸らして瞼を閉じてしまったので、面白くなかったみたいだ。

 

「はいはい、戸田はさっさと食べて、食後のコーヒーはブラックで宜しく」

「あーい、了解です」

 

 天海さんは自分のデスクに引き返すと見せかけて、わたしの耳元に糖分補給の甘い言葉を囁いてから、踵を返して歩いて行く天海さんの背中を茫然と見送り、紅く染まりきった頬を見られないようにそっと俯いて隠した。


(…恵梨香のことが愛しすぎて、わたし心配してたのよ…)


 頭の中で天海さんの言葉が何度もリピート再生されては身体が熱くなっていく久しぶりの感覚に、ホントにお付き合いが始まったのだと実感が湧いてきている。


 背後のデスクに座る親友のことは、今は少し考えられそうにないのだった。

 

 

おしまい。