好きだと気がついたあなたとわたし (後編)

好きだと気がついたあなたとわたし (後編)  (パラレルオフィスラブ)

 


*現実の方々とは無関係のフィクションの世界です。

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 新垣は普段はとても芯があってしっかりしている子なのだが、わたしやもう一人の親友の比嘉の事となると血相を変えて心配してくれるからありがたいけど少々暑苦しい。

ここは一先ずいつもどおりに、はぐらかしておくとしようか。


「心配してくれてありがとね、ていうか思ってたより大したことない感じだったし、気にしないで」

「大事な話なのに大したことないってことはないでしょう」

 

 覗き込んでいる顔の距離をぐいぐい縮めてくる新垣に、押されるように顔を引いた。

 

「ちょっコラ!顔近いって」

「何があったの?適当にはぐらかしちゃイヤだよ」

 

 椅子の背もたれ限界まで顔と腰を引いて逃げ場のないわたしを知ってか知らずか、新垣はおでこがぶつかる距離まで顔が迫っていて、このままだと気を抜いたら唇が触れ合ってしまうと危機感を覚えて、新垣の顔を咄嗟に持ち上げた手で覆って押し返した。

 

「わかったわかった、降参!きちんと話すから迫って来ないで」

トッティーがはぐらかしたってことはここじゃ出来ない話ってことだよね、屋上まで行こう、ほら早く行こうよ」

 

 サンドイッチまだ一切れしか食べてないし、ボックスも開けっ放しだと文句を言っても新垣の耳には入っていないのか、わたしの腕を強く引く手を緩めることなく、本日二回目の屋上までやって来たのである。


 新垣は偶然にも天海さんと同じ位置の柵に片手を置いて、わたしを真剣な眼差しで見つめている。

 もしや、彼女からも告白されるのではないかと、この酷似した現状だと考えてしまうが、新垣はわたしの言葉を待っている様子なのだろうと一文字に閉じられた口元で察した。

 

「遠回しに言うと誤解されそうだからぶっちゃけて言うけど、大丈夫?」

「大丈夫って聞かれると余計心配になるじゃないの…大丈夫じゃないけど聞かずには戻れないよね」

「確かにそうやね…今更だしまあいいや。さっき、天海さんにちょうどこの場所で告白されたの。それだけだから大したことないでしょ?」

「こ、こ、告白された!?えっ………」

 

ちょっと何で絶句してんの?

新垣はどういう心境で絶句したのか分かり兼ねる…

 

「…もしかしてOKしたの?」

「うん、即でOKしたけど」

 

 絶句した次は激しく動揺し始めていて、顔色がみるみるうちに青白くなっているような気がした。

 女性である自分が女性の上司に告白されてOKしただけで親友がこんな反応するものなのか世間一般的にもよくわからず、同性と付き合った経験なんてないからどうしたものか対応に困る。

 

トッティーはずっと前だけど、天海さんのこと鬼上司だのデカ女だのパワハラ許してなるものか訴えてやる!とか、自分だけは社内の女の子達みたいには絶対に落ちない自信あるし~とか言ってたよね…?」

「あーそういえば言ってた言ってた!よく覚えてるね〜、ガッちゃん記憶力いいもんね。偉い偉い」

 

 ニッコリ笑顔で新垣の頭を撫でてあげると、口角をちょこっと上げて微笑んでくれたのはほんの一瞬で、直ぐに険しい表情に戻った為、わたしは困惑気味に手を引っ込めた。

 

「…そんな簡単に落ちるなんて信じられない……わたしだって…好きなのに……」

 

 だんだん声が小さくなっていったけど、わたしだって好きなのにという言葉が聞こえて、今までの反応と合点がいったのと同時に、新垣のことを考えるとこれから気まずくなるのは避けられないだろうなと思った。

 

それにしても、今まで気がつかなかったなんて、一番側にいる同期として親友として好きな人を知らなかったことが結構ショックというか…

新垣も天海さんが好きってことは、わたし達ライバル関係にもなってしまうやん!!どうしよう、どうもできんか。

 

 何と言葉を紡いだらいいのかしばらくの間一人で考える時間が欲しいが、そうもいかない現実が目の前にある。

 

「ごめんね…新垣が(天海さんのこと)好きだったとは、全然気がつかなかったなんて…わたしは馬鹿だ…」

「わたしだって自分の気持ちにきちんと向き合ってなかったというか…(トッティーのこと)すごく好きだって今意識し始めたなんて自分のことながら信じられないし、すごく悔しいもん…」

「今意識し始めたんじゃ気がつかなくて当然な気もするんだけど…(天海さんに告白されなかったら)わたしも意識してなかったと思うし…ホントにごめん」

「わたし諦めたくないよ、(トッティーは告白されたばかりなんだし)まだまだ隙があるはずだもん」

「そ、そうかもしれない…でもこの惹かれ始めた気持ちは決して嘘じゃないよ。わたしだって諦めたくない…(天海さんは渡したくない)」

 

 もうそろそろ下に戻って昼食取らないといけない時間が迫っているため、気まずくなった空気を変えるべく、連れて来られた時とは逆にわたしから新垣の手を取って、優しく繋いで微笑みを浮かべながらそろそろ戻ろうと伝えた。

 

「…その微笑みにやられちゃうのに…わかってないなぁ…」

「んん?今なんか言った?」

「なんでもないよ」

 

繋いだ手の指先が静かに揺れて、なんでもないよと合図を受けた。