好きだと気がついたあなたとわたし (前編)

好きだと気がついたあなたとわたし (前編)  (パラレルオフィスラブ)

 


*現実の方々とは無関係のフィクションの世界です。

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 上司の天海さんから大事な話があると、昼休みに屋上に来るようにと呼び出され、何事かとビクビクしながら身構えていたのに、仕事の御叱りなんて恐ろしいものではなく、予想外の御言葉を頂いたのだった。

 


「戸田、急に呼び出して悪かったわね」

「いえ、もしかして私、何かやらかしてしまいました…?」

 

 屋上の柵に両手を突いて真剣な表情で遠くを見つめる天海さんに、相当なヘマをやらかしたのではと不安が募っていく。

 天海さんは社内では誰もが認める仕事人間であり、社長からの人望が厚く、女性社員からの人気も社内一で同性からの憧れ的存在なのだが、どうしてなのかわたしへの接触が多いのは気のせいなのか、イマイチ掴めていない。

 それがどういう意味を持っているのか、今ちょうど目と目が向き合って不意に頬を緩めた天海さんから直接聞けるらしいことを察した。

 

「あーそんなのと違うのよ。ごほん、単刀直入に言うと、わたしは戸田が…恵梨香のことがずっと大好きなの!もし今相手がいないんだったら付き合って欲しい」

 

 腰を屈めて頭を下げて差し出された片手に、これはテレビで見たことがある告白シーンと類似しているなとぼんやりと思ったのは数秒で、次の瞬間には目の前の告白は現実だと思考が急速に動き出すのだった。

 

も、もしかして、今までの接触はそういう意味なの!!

ちょっ、ええーーっ、天海さんがわたしのことがずっと大好きって嘘じゃなくホンマですか!?やだ、どうしよう、めっちゃ嬉しいんやけど!!

今相手がいないんだったら付き合って欲しいという素敵なフレーズが脳内に響くと、熱が溜まっていくように頬を染めていた。

 

「えっと、よろしくお願いします」

「えっ、そんな即答していいの?」

 

 屈めた腰はそのままに、頭をパッと上げて片手を差し出されたまま目をパチパチ瞬かせる天海さんがコントを披露しているかのように面白くて、胸をキュンと打たれるくらいとても素敵だと思った。

 

「はい、わたしも天海さんに惹かれているみたいなので、こちらこそお願いします」

 

 天海さんの片手に自分の手を繋いで、親指でそっと手の甲を撫でたら、嬉しそうに笑みを浮かべた天海さんに引き寄せられて、彼女の胸の中に顔を埋める体勢で抱き締められていた。

 

「へぇー、天海さんも少しは膨らみがあるんですね〜…」

「って、こらーっ!告白直後になんて失礼なこと言うのかしらー?」

「それはまあ惚れた弱みなんで、許してください……ぁ……んっ……」

 

 わたしの頬を撫でて滑らかな手つきで顎を持ち上げられて顔の距離がゼロになり、ゆっくりと唇に包まれてリップの感触を一つ一つ確かめるように動く天海さんの柔らかさに、夢中になって自分からも求めていたのだった。

 


***

 


 屋上から自分のデスクに戻り時計を確認すると、お昼休憩時間が半分弱くらい経過していると気がつき、早く食べてしまわないと思い、お昼ご飯に作ってきたお手製のサンドイッチにかぶりついたところ、毎度毎度タイミングが悪いあいつが目の前に顔を覗かせるから、思わずむせてしまった。

 

「ゴホッゴホッ、ちょっとがっちゃん!こっちは食事してんのに急に顔覗かないでよ」

「ごめんごめん。あのさ、休憩時間が始まって直ぐにトッティーが天海さんにどこかへ連れて行かれてたよね?」

「うん、大事な話があるって呼び出しくらったけど、それがどうしたの?」

「大事な話!?…どうしたのじゃないでしょ、わたしトッティーがデスクに戻るまでずっと心配してたんだよ」

 

 眉毛を八の字に下げて心配している顔で見つめてくる彼女は、わたしの同期で同い年で親友の新垣 結衣なのである。

 


[登場人物追加]

新垣 結衣

同期入社で同い年の戸田さんとは同時期に総務部配属になり、仕事は丁寧で慎重にこなしているが、スピーディーな対応を求められると焦ってしまい、何度も謝っている姿が周囲に目撃されているゆるキャラ的存在。

親友である戸田さんのことが気になっていて、時々口論になったりするが心許せる存在なので仲良しさんだ。