嵐のオフィスdeドキドキ観察 (中編)

嵐のオフィスdeドキドキ観察 (中編)

 


*現実の方々とは無関係のフィクションの世界です。

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羊さんに連れられて着いた場所はというと、前編で話していたわたしの先輩である波瑠さんの部署の目の前だったのだ。

こちらの部署の紹介も簡単にしますと、食品や飲料から健康食品関連のマーケティングや営業を行っているのがこの部署であり、未解決商事の中でも年間総じてトップクラスの営業成績を上げているため、未解決営業部とも言われている。

羊さんがどうしてこの部署を覗きに来たのか疑問に思うので、ズバッと聞いてみることにした。

 

「あの、どうして未解決営業部を覗きに来たんですか?」

「覗きじゃなくて、偵察か観察と言ってもらいたいなぁ。まっ本音をいえば、この部署に気になっている子がいるから見に来たのよ」

「羊さんが気になる人って大半の女性社員なんじゃないですか?」

 

そうかもしれないわねっなんて、三日月目をニッと細めてわたしの頭をひと撫でして笑うと、透明なガラス窓の向こうに目を向けていった。わたしもそれ以上の追求はせずに彼女に習って中の観察を開始した。

 

 

「谷村さん、もう少し待ってもらえるように先方に頼んだから、落ち着いて残りの作業を終わらせるわよ」

「ご迷惑をかけてしまい申し訳ありません、広告の製作を一件ど忘れしてしまっていたなんて、本当に自分の身を切ってしまいたいくらいです…」

「自分の身を切るよりも、手早く案件を料理していきましょう。今夜はこんな荒れた天気だし、いつ停電するかわからないからみんな協力するようによろしくお願いね」

 

悪天候で残っている数人が鈴木次長の協力要請を受けて了解の返事をして、それぞれに慌ただしく作業に入ったようだ。

 

波瑠さんの直属の上司である鈴木 京香次長は、他の一般部署や人事部、経理部、総務部などからの人望も厚く、毎年恒例で入社式の司会進行役を依頼されて引き受けており、彼女を知らないという社員自体が希少なのだとか。

波瑠さん曰く、鈴木さんはものすごく綺麗な人なんだ~と話してたり、それからお酒が存分に入ると京香さんはお顔だけじゃなく心や声も綺麗な人で、怒られた後とか部下のわたしにキツイ言い方をしてしまったと謝ってくるから良い人なんだよ、と憧れるような瞳で語っていたことを思い出した。

その時の波瑠さんは唯の憧れだったのか、それとも恋い焦がれて甘い疼きの中を漂っているのか、わたしにはわかりかねている。

 

その波瑠さんはというと、デスクのパソコンに向かいタイピングをして資料か何かの作成中で、眼鏡をかけている姿が珍しくて見入ってしまった。

 

「へぇー、あの子眼鏡をかけてもなかなかの美人さんじゃない…」

「えっ、眼鏡ということは羊さんが気になっている人は…波瑠さん?」

「シーッ、声のボリューム下げて」

「すみません…」

 

中に聞こえるでしょっと窘めながら羊さんに頭をぽんぽんと軽いタッチを受けて、口を噤んで再び観察を続けていく。

 

「ふぅー…何とか出来てきたかな、これを添付して転送っと…鈴木次長、資料の作成経過を送ったので確認をお願いします」

「はいはーい……波瑠さん、ちょっとこっちに来てもらえるかしら?」

「ええ、もう確認出来たんですか?!」

 

波瑠さんは席を離れて鈴木次長のデスクの傍に立つと、ここをちょっと見てと言うように顔をパソコン画面に寄せさせるように誘導したら、咄嗟に鈴木次長が腕を伸ばして素早い動作で波瑠さんの眼鏡を外して、何とも驚愕するような行為を目撃してしまったのだった。

 

(あわわっ…今のってもしかすると…唇が波瑠さんのソレに触れてたよね?!)

(あらあら、鈴木次長も隅に置けないわね~!周りは急ぎの仕事に集中してるから誰も見ていない隙をつくとは流石ね…面白いじゃない)

 

羊さんもあの二人の秘密の戯れを目撃していたみたいで、片手を顎を添えて口角を上げながら面白そうな顔付きでその様子をじっと見ていたのでした。