嵐のオフィスdeドキドキ観察 (前編)

嵐のオフィスdeドキドキ観察 (前編)

 


*現実の方々とは無関係のフィクションの世界です。

*本文の無断複製・転載等行為を禁じます。

 


[登場人物追加]

伊藤 蘭

里帆さん達の部署の部長。

羊さんを指導したり面倒見てきたので仕事面では信頼しているが、彼女の若干の(かなりの)素行の悪さに頭を悩ませて早数年、定年退職までに落ち着かせる方法はないかと模索している部下想いのしっかりした人。

 

 

皆さんどうもおはようございます!

わたくし波瑠さんの後輩の吉岡です。

波瑠さんの好きな人は知ってる?ですか…実はいつもそれとなく尋ねてみるのですが、また今度ね~とはぐらかされるので、知らないのがちょっとだけ切ないのですが…まあ、それは今は置いておくとして、本日は悪天候により帰宅困難になってしまった未解決商事の数人にスポットを当てて観察していこうと思うのであーる。

 


まずは、わたしの配属先から見て行きましょう。

何をしている部署なのかを簡単に言うと、医療や美容関連の商品流通のマーケティングを行なっているのが、このメディカル部なのです。

ここに配属されてから約三年になりますが、未だに掴めきれない人物が一人います。

その人というのは…

 


「伊藤部長、今日の分のお仕事はバッチリ終わったので、そろそろ帰ってもいいですか~?」

「まったくもう…普段は部下に仕事をどんどん振っているんだから、こういう悪天候の時くらい手伝ってあげるとか気遣ってあげられないの?」

「またまた~、私より優秀な人材が揃っているこのメディカル部で、私を誰が必要としますでしょうか?」

 

伊藤 蘭部長と吉田 羊課長のああいったやり取りは何十回も見慣れた光景なので、あえて口を挟む者はいないため、わたしが試しに手を上げてみました。

 

「はーい!」

「ほら、吉岡さんは必要だと手を上げているわよ、よかったわねー」

「あら~、里帆ちゃんが今晩のお相手をしてくれるってことですよねー、いやはやモテる女はタイヘンですね♪」

「そんな冗談はいいから、早く行って行って」

 

なんだろう…なんか今、吉田課長の違う方のスイッチを入れてしまったような気が…頭が混乱し始めていた。

わたしの混乱をもっと増長させるように、外から急な突風が吹いて窓にゴーッと叩きつける音が室内に響いた。

 

「きゃー!!ぅぅ…暴風がついに来ちゃった…」

「よしよし大丈夫よ、お姉さんが朝までずっと一緒にいて、里帆ちゃんを守ってあげるよー♡」

 

体を屈めてわたしのデスクに片腕を伸ばし手を置き、もう片一方の腕は肩を組んで顔を近づけてくる羊さんに、頬が火照って心臓が早鐘を鳴らすようにドクドクと煩くなっている。

 

「ううぅ…吉田課長…今日の分の仕事がまだ少し残っているのですが…」

「じゃあ手取り足取りやっつけていこっか」

 

わたしと羊さんの会話を横で聞いていた紗季さんが痺れを切らしてしまったのか、デスクの書類を三枚程度掴んで、羊さんの肩越しにバッと突きつけてきていた。

 

「手がお空きでしたら、吉田課長がわたしに振ってきた案件の資料が完成してるんで、コピーでも取ってきてくれませんか?」

「お♪さすがあたしの紗季ちゃんだねぇ、今度ご飯うちに食べにおいでよ、ねっ♡」

「あなたのじゃないですし、ここでおおっぴらに誘うのはやめてください…」

 

紗季さんは溜息を吐いて、カップのコーヒーを飲みながらパソコンの画面に顔を戻した。

 

「…はは、ホント正直じゃないんだから…まぁそこに惚れてるのか…な~んて、それじゃあ吉岡さんとコピー取りに行って来ますね~」

「ええっ、わたしの仕事はどうなるんですかー?」

 

羊さんに手を取られて立たされると、そのまま手を引かれて一室を後にした。

コピーを取りに行くだけなのに憧れの羊さんと手を繋いで歩けるなんて、とても幸せな気分で嬉しかったが、それと同時に、さっき羊さんがポツポツと呟いていた言葉も気になっていた。

 

「あの…さっきの正直じゃないんだからというのは、紗季さんのことですよね?」

「んー…気になっちゃった?」

「それは…そりゃあ気になってしまうというか…羊さんのこととなったら…」

「あたしも気になってるよ、もちろん里帆ちゃんのことがね」

「えっ、あぁあ、わわっわたしのことですか!!?」

「そうそう。あ、そうだ!ちょっと気になってることがあるんだけど、オフィスデートしよっか♡」

「オフィスデート!!ぜぜ、ぜひ!!!」

 


羊さんについて行って到着した場所を、わたしは三度見くらいしてしまいました。