魔女の鮮血~矢代の激昂~⑦

魔女の鮮血~矢代の激昂~⑦

 

「ぁ…危険というのは……状況を教えてください…」

「呼吸停止で現在人工呼吸を継続中の状況です」

「血液センターからの到着を待っていられませんし、患者さんのご家族の方に連絡を取っていたら時間がありませんね…念のため矢代さんの血液型を教えてください」

「ぇ…えっと…O型です。理沙さんはA型なので、わたしの血を彼女に輸血してください…彼女が助かるんだったらわたしはどんなことだってします…!!」

「矢代さん、落ち着いてください。では、矢代さんに給血をお願いするので、採血を行う部屋へと直ぐにご案内します」

「はい (理沙…わたしが絶対に助けてあげるから…がんばって)」

 

 タオルで頭部の水滴を素早く拭い取ると、わたしは先を歩いて行く田丸先生を早歩きで追って行った。

 


一方、救急救命の治療室では…

 

「バイタルサインのチェックから見ると、輸血路は、大量輸血・輸血ができるように二ヶ所以上を確保しないとだめね…それから患者さんへの乳酸化リンゲル液及び酢酸化リンゲル液の注入を行っていきます。出血部分は大量の手術用ガーゼで圧迫止血したままで手術を一時中断するわ」

 

 橘先生は迅速的確に患者の容態に合わせて指示を出したり治療を施しているが、出血量が多いのか、止血機能を回復させるためにあらゆる手段(輸血、加温など)を講じてから、再度体勢を立て直して手術を再開するという2段階の手術(ダメージコントロール手術)を行なうようである。

 

「橘先生、血圧の大幅低下により出血性ショックの徴候が出てきています、このままでは容態が急変してしまいます…」

「橘先生、心肺停止!!」

「くっ…諦めてはだめよ、あなたはまだ自分の命より大事だと言う相手に想われているのよ、絶対に死なせたりしない!心肺蘇生法開始します!」

 

 

 

せん…ぱ…い…

 


だれ…

 


おき……て……だ…い!

 


うるさい…わたしは光を浴びたくないの…放っておいて!

 


めを…さまして……わたしを……おいて……いっちゃ……

 


それは一瞬のことだったのかもしれないし、もしかしたら永遠に醒めない夢を見ていたのかもしれない。

 

 

生き物なんて突然の死が待ち受けているのは必然のこと。

 

 

自分だって例外ではなく、今この瞬間に息を引き取ることだってあるのだから。

 

 

 

「新田先生、脈は!?」

「…回復しません…ダメ…なんですか?」

「諦めるのは早いわ!心マッサージを続けて!」

「交替します」

 

 

 

きっとここを出ていけば、もう苦手な人間とも関わらずにいられるし、孤独な老いを迎えることも無い。

 

思い残すことなんてわたしには……この世に残していくものなんて大したことない……はずなのに、どうして、どうして心が温かくなってしまうの…わたしを決して離そうとしない力強い手の感触が甦ってくるのを感じた…

 

…続く。