魔女の鮮血~矢代の激昂~④

魔女の鮮血~矢代の激昂~④

 


「理沙…さん……う…ぐぐっ……どうして…こんなことに……」

 

 扉の前で立ち尽くし、何も出来ない自分の情けなさと再び湧き上がる憤りを打つける手段を持てずにいたわたしは、無意識のうちに爪が食い込むほど手を強く握りしめていた。

 

「あれは…?!……新田先生、先に入って処置をお願い!出血性ショックを起こし始めたら輸血も必要になるから、直ぐに対応をよろしく」

「わかりました、橘先生も急いで来てくださいね」

「了解!……あなたは患者さんの付き添いの方ですか?」

 青色の手術着を着た女性医師らしき人が声を掛けて来たので、戸惑いながらも「はい」と答えた。

「手を強く握りしめて血が出ているわね、あなたにも一人付けるから治療しましょう」

「…わたしなんかどうだっていいんです…お願いします、理沙さんを…わたしの命より大事な人を助けてください!!」

「わかりました、絶対に救ってみせるから、あなたも命を大事にしてね。田丸先生、彼女の手を診てあげてくれる?」

「わかりました!」

 

 わたしに声をかけてくれた先生は真剣な顔つきに変わり、救命救急の処置室へと向かって行く姿を追って、「どうかよろしくお願いします!」と声を掛けて深々と一礼をして見送った。

 

 それから、先生の指摘を受けた右の手のひらを見ると、爪が食い込んで傷口が開いて血が流れていたが、もしかしたら彼女を止血した時に触れた鮮血も混じっているんじゃないかと気がつき、この血を拭ってしまったら彼女との繋がりが断たれてしまうのではないかと不穏な考えが過ぎりながら、手のひらをしばらく眺めていた。

 彼女との繋がりを思考している甘くて辛い空気を飛ばすように、のびのびした声の人物が横に立って話しかけて来た。

 

「わたしは研修医をしている田丸と言います。今からその手を処置するので、わたしについて来ていただいてよろしいですか?」

「えっと…できればここから離れたくないんすけど…それに、自分よりも先に彼女の命を救ってほしいです」

「あの患者さんを救うのは橘先生と新田先生という、この病院では高度なオペ技術を持つお二人がついてるので大丈夫です!なので、わたしはあなたの命を救う担当医というわけです、お分かりいただけましたか?」

「自分は命の危機ではないんすから平気ですって。それに、理沙さんの鮮血を落とすなんて絶対嫌なんです。触れないでほしいす!」

「触れないと治療が出来ないじゃないですか。そんなに痛々しいのに何ともないような顔をしたり、その傷を放って置いてもっと酷くなって、あなたの先程から話している理沙さんが治療を終えて、その手を見たら悲しむって分からないんですか?」

 

 

 

…続く。