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山奥物語(仮)⑦

 私が可愛いワンちゃんですね、と言うとみゆきさんは、ワンちゃんじゃないも〜んと再び否定していますが、スカートの下からチラッと見えているふわふわの尻尾は、ブンブン動いて嬉しそうなのでした。

そういえば、今何時だろう?
待ってください、すぐ確認しますね。
うん。(キョロキョロ)あっ!あの鳥さんの家みたいなのが時計かなぁ?
はい、鳩時計と言って、一時間ごとに鳩が扉から出てきて、鳴く回数分で時間を教えてくださるんですよ。
そうなんだね、初めて本物を見たよ。

 鳩時計の指針を確認して、14時半過ぎたくらいだと教えてあげると、急に慌てた様子でローブを着直していました。

大変、わたしもう行かなくちゃ!美味しいお料理を食べさせてくれて、どうもありがとう♪
いえいえ、困っていたらお互い様ですから、よろしければまた…
もしよかったら…また遊びに来てもいいかな?
あっ、はい!もちろん大丈夫です。
ホント!わ〜いやったー!れいかちゃんありがとう///
はい///

 みゆきさんはお家を出ると、こちらを向いて、ブンブンと手を振りながらトコトコ走って行きました。
 不思議な気分でその場に立ち尽くしています。…この家に立ち寄る者などいない、自身でも誰かを気安く近づけないように警戒しているし、先ほどまでの楽しく笑っていた時間が幻であるかのように、記憶に靄がかかってしまいそうになるのでした。
 玄関の戸を閉めて、履いていたサンダルを脱いで、上がり間に足を掛けた時、電話の呼び鈴が鳴り出したので、急いで居間に向いました。

もしもし…はい、青木でございます。お仕事の依頼ですね、はい、お伺いします…ええ、大きさでしたら幾つかサイズがございますので、お客様に決めて頂いております…

 お仕事の依頼が来ました。