山奥物語(仮)③

 ぐったりしてからずっと目を閉じている彼女は、フードが脱げた後も変わらず閉じており、頭の上にひょっこり顔を出した犬耳を見られていることに気がついていません。

これは本物の耳なのでしょうか…?

 そっと人差し指を伸ばして、ちょんちょんと突くと、ピクピクッと犬の耳が動き、私はビックリして直ぐに指を引っ込めました。
…どうやら本物の耳のようです。
 女の子の素性について疑問に思うことが多々ありますが、一先ず何か食べさせてあげることを優先して考え、彼女の足元に視線を向けました。
ブーツを履いていますね…脱がせますね。
 ブーツの中からは、靴下を履いた足が出てきたので、その中が人足なのか犬足なのかは分かりませんでした。自分の靴を脱いで彼女のブーツの隣に揃えて並べて置き、再び彼女を抱き上げて、奥の座敷まで運んでゆっくり降ろして寝かせました。

 台所に立つと、先ほど見た犬の耳の事を考えると、今から作る献立は人間の食べ物にするべきか、はたまた犬まんまにしてあげるべきか、頭の中で迷ってしまうのでした。

不意に、悪魔と天使が舞い降りて、私に語り掛けてきました。

あの子はどう見てもワンちゃんなんだから、犬まんまを作ってあげて懐かせてペットにしちゃおうよ♪
悪魔さんの声に耳を傾けてはいけません!あの子は天使の様に純粋な様子であなたの前に現れたのですから、きちんとおもてなしの料理を作ってあげるべきだと思います〜
天使ちゃんが珍しくまともな事言ってる!どうしたの?もしかして御饅頭でも食べ過ぎちゃった?
いっぱい食べました!ゴホン…天使でも御饅頭は美味しく食べられるのですから、あの子にも御饅頭を食べさせてあげてくださいね♪

…よくわかりませんが、わかりました。

 冷蔵庫の中から食材を選んで取り出し、黙々と調理していきました。