電車に揺られて行く道、迷い道

その日は朝から雲一つ無い晴々した空模様だった。

母にはちょっと遠出するから、帰りは遅くなるかもしれないとだけ言って出てきた。
待ち合わせ場所まで小走りで向かうと、藍色の艶やかな髪をなびかせて駅の時計をジッと見つめるあの子を見つけて、早足に変えてその場所に急いだ。
 
「お待たせ、ごめん待った〜?」
「おはようございます、いえ、わたしもつい先程到着したところなんですよ」
「おはよう、いつも早く来ようと思ってるんだけど、なかなか難しいよ」
「そんな気にしないでください。待ち合わせ時間よりも前なので、十分早く到着してるじゃないですか」
「うー、でもでも〜先に着いてあとどれくらいで来るかなぁって、そわそわしたりウキウキしてみたいんだもん」
「確かに、待ってる側しか味わえない気分もありますね」
「うんうん、あるよね」
 
それから、私たち二人駅のホームに並んで立った。
隣の彼女は少し落ち着かない様子で、顔をあちらこちらと動かしていた。
手を伸ばして空いている手を取り繋ぐと、普段の様に落ち着きを取り戻したようで、微笑みを浮かべてくれた。
 
電車に乗り込み、座席に並んで座ったけど、あまりお話はしない。
彼女が公共の場で大声を上げて話すことを良しとしていない為であった。
わたしも、極力会話する時は気をつけて小声で話すようになっているのだ。
 
「れいかちゃんがいなかったら、知らない事ばかりだったんだな」
「わたしもみゆきさんと出逢ったことで、知らなかった事をたくさん知る事ができたんですよ」
「ううん、れいかちゃんと比べたらわたしなんて分からないことだらけだったよ」
「みゆきさんは、分からないことをきちんと知ろうと考えたり行動が出来る方だと思いますよ」
「じゃあ、れいかちゃんのことをもっと知りたいな…」
「そうですね…わたしもみゆきさんのことをもっと知りたいです」
 
 
電車に揺られて向かう先には何が待っているのだろう…
ざわざわと人の話し声ばかり気になってしまう。
彼女が隣にいるのに、気になってしまうのは周りの知らない人の会話だけなんて、やるせない気持ちが溢れる。
 
「みゆきさん、決して手を離してはいけませんよ…」
「う、うん…わたしも離したくないよ」
 
彼女はわたしの事が心配なのは承知の上だ。
だってわたしはいつも、その優しいあなたの手を無意識に離してしまうのだから…
絶対ということはないのだ。
だからせめてこの手だけは固く繋いでいようと思うのだった。
 
 
「わ〜い、着いた着いた〜!」
「初めてのネズミーランドです!」
「あ〜ん、行きたいところばかりで迷っちゃうねー」
「そうですね、着いて早々迷ってしまいますね」
「ジャーン、ガイドブックをばっちり持ってきたから安心していいよ、えへん!」
「まあ、それなら安心して一日を楽しめますね♪」
「うん、一緒に楽しもう、れいかちゃん♪」
 
 
結局わたしはトイレ休憩時に迷子になってしまい、れいかちゃんをパーク放送で呼び出してもらう残念な結果になってしまったのでした。
 
「せっかくのデートが迷子になってぶち壊しだよ…あうう…」
「まあ、迷っても合流出来ましたし、みゆきさんらしくてわたしはそういうところも含めて大好きですよ」
「れいかちゃんは優し過ぎだよ〜///」
 
 
おしまい。