4月1日のgood-bye

朝の光が部屋に差し込むと、規則正しい生活を送るべきだと長年の積み重ねで身についた体が目覚めた。
昨晩の情事からそのまま眠りに就いた生まれたままの姿で、わたしの胸に顔を埋めて眠っているみゆきを見ると、寝覚めまでもう少しかかりそうだと思った。


それから、ようやく彼女が起きたのはわたしが目覚めてから三十分後くらいでした。
布団の中で口付けを何度も繰り返した私たちは、おはようと大好きの挨拶を交わし合うのだ。


二人で手分けして、朝食の準備を済ませて食卓に着くと、いただきますの挨拶をきちんとしてから食べ始めた。

あっ、このお味噌汁すごく美味しい。
それはもちろん、みゆきへの愛情をたっぷりと込めてますから。
そう…うーん、あのさ…
ん?どうかしたの?

お味噌汁のお椀をテーブルにそっと置き、ふぅ〜っと息を吐いたみゆきの表情はあまり見たことが無い曇り顏で、胸がざわつくのを感じた。


れいか…わたしたち、お別れしようか…
ぇ…おわかれ…なんで…?

無言で瞳を閉じたみゆきの心が読み取れなくて、無性に怒りが湧いてきて、思わずその場に立ち上がると机をバンッと叩いていた。

お別れってなんですか?…昨晩たくさん愛していると耳元で囁きながらしてくれたのは欲を満たす為だったの?わたしにだって縋るようにいっぱい愛撫して欲しいって求めてくれて嬉しかったのに、全部全部ウソだったの…?
あ、れいかちゃん…その、ね…
イヤ…おわかれなんて絶対に嫌です…‼︎


みゆきが座る反対側に駆けるため、椅子をバタンと倒してしまったことなんかどうでもよくて、今はただ、愛する人が離れてしまうのを引き留めることしか考えられなくなって、縋り付いて両目からたくさんの涙が溢れた。



みゆき…みゆき…貴女がわたしをあの日、鉄格子越しで離れたくないと伝えてくれた日から、わたしはもうこの人の傍から二度と離れないと固く誓いました…わたしの独りよがりではありますが…お別れなんて絶対に嫌です!
…ごめん…れいか…ごめんね…お別れしようなんて嘘なの。


う…そ…なの?
えっと…カレンダーの日付けを見てくださいませみゆ…

4月1日

エイプリルフールでしたか…うふふ、うふふふふっ今日はエイプリルフールでしたね♪そうなのね〜れいか、まんまと騙されちゃった♪
あわわわ…れれっれいかちゃんの目が全然笑ってないんですけど…ごめんなさい!もっと愛が深まるからって黄色の雷ちゃんから助言されて…わたしは何て事を言ってしまったの!そうだ、嘘ついたら針千本飲むんだよね…

待ってください、針千本を飲むのは指切りをした約束を破った時ですから!
そうなの!?
そうですよ…はあぁー…まさかみゆきさんまでエイプリルフールに便乗してしまうなんて…黄色の雷さんにはたっぷりとお灸を据えなければいけないわね。


そう呟いて座り込むわたしを一度抱いてから、みゆきは見つめる瞳を優しく潤ませて、言葉を紡いでいく…


れいかの独りよがりなんかじゃなくて、わたしもあの日、二度とれいかを離さないと固く誓っているんだよ…こんな頼りないわたしが言っても大丈夫かなって不安になるけど…
まったく、わたしの大嫌いな早起きさんは頼りないですよね…
れいかちゃん??
なぁんて、全部嘘ですからね〜
わたしの大好きな寝坊助さんは頼りになるってこと?

You got it!

正解です!だね〜
Yes.

みゆきが美味しいと言ってくれたお味噌汁はもうすっかり冷めてしまいましたが、私たちのお互いを愛する気持ちは冷めるなんて事はありませんから。


終わり。