みゆき王女とれいか王子様の恋物語〜もう一つの恋が芽生える庭園〜前編

昼間の華やかな婚礼の儀では、感極まってたくさん涙が零れて、夕方からの披露宴でも泣いてしまった為、慣れないメイクが崩れてきていたことに焦り、披露宴会場から断りを告げて抜けてきました。


親族関係者の控え室まで歩いていると、月の光に照らされた美しい庭園が見え、引き寄せられる様にその場所に近づいていた。

わぁ…綺麗な風景です…

庭園をしばらく散歩していると、屋根が付いた小さな休憩所が見え、そこに見覚えがある人物を見つけました。


ぁ、あの人はやな奴…じゃなくて、れいか王子様の従者の…
あんな淋しい場所で何をやってるのだろうと疑問に思いながら、無意識に近づいていました。


あの、あなたは披露宴には参加しないのですか?
…はい、わたくしは本日別の仕事を仰せ使われておりましたので、参加する資格が無いのですよ…
王子様の側近のあなたが、参加する資格が無いって…もしかして何かやらかしてしまったの?
ええ、深く反省しております故、わたしにはこの場所が一番相応しいのです。


切なく瞳を揺らして見つめる先は華やかな王宮だろうか…

隣、いいですか?
どうぞ。
ありがとう。
いえ、それよりわたしなんかに構っていて宜しいのですか?
別に構ってあげる為に来たわけではないんですから勘違いしないでよね…ただ、寂しそうな顔が少し気になっただけです。
…そうでしたか。


しばらくの間、無言で月を眺めたり夜風に揺れる庭園の花々を見つめているわたしとなおさん。
そんな中、気になった事を聞いてみることにした。

なおさんはいつぐらいかられいか王子様の従者をなさっているのですか?
王子とは幼い頃から遊び友達としてお側においてくださっていたのですが、うちの家族が大所帯になるにつれて、わたしも働かなくてはいけなくなってしまいまして、数年程前に従者として生きていく事を望み…王子には感謝と敬意を払い、今に至ります。
…わたしもパパが早くに亡くなってしまい、お城の衣装係として働くママと二人きりになってしまったの…ですから、わたしに侍女としてお仕えさせてくださったみゆき様と王様、王妃様には大変感謝しているのです。
なるほど…境遇は違いますが、私達は少し似ていますね。
そうですね。


なおさんの顔をそっと覗くと、先ほどの陰りがある切ない表情が少し和らぎ、優しさを瞳に宿してわたしを見てくれていました。