れいかお姉ちゃんの苦悩①

わたくし留学します…


おめでとう、青木さん!あなたの留学がめでたく決まりました。
はい??佐々木先生、留学とは何のことでしょうか?
先生のニコニコ顏と裏腹に、わたしは疑問と困惑が混ざったような顏をしていると思います。
あら?もしかして、親御さんから伺ってなかったのかしら??
わたくしは何も伺ってませんが…
先生も困惑した表情を浮かべております。

と、とりあえず、今の時点で分かってる事だけ説明します、よろしいですか?
………はい、わかりました。



昔から聞き分けがよく真面目でよくできた娘さんだと周りから言われていました。妹もおとなしくて物静かで優しくて良い子だと褒められていました。
実はみゆきは、小さい頃はわたしに距離を置いたり遠慮したりで、ほとんど甘えてこない妹でした。

だから今はお互い我慢していた愛情や感情が爆発してしまっているんだと思います。


とぼとぼと家路に着き、玄関の前まで到着すると、急に留学というコトバが頭に重くのしかかってきました。
リュウガクって何?おいしいのでしょうか?
余計なことを考える頭を振り払い、玄関の扉を開いてお家に入りました。

ただいま帰りました〜
玄関で靴を脱いでから上がり框に座っていると、みゆきがやってきて迎えてくれました。

れいかお姉ちゃん、おかえりなさい!
みゆき、ただいま。
みゆきはわたしの背中にくっ付き、スリスリと顔を擦り付けて甘えてくれます。
今日の晩御飯はね、ハンバーグだよ〜わたしもお手伝いしてお母さんと一緒に作ったんだ♡
わ〜それはすごく楽しみね。
えへへ、愛情たっぷりのハンバーグなのです!!
愛情はわたしだけに詰め込んでくれたんですか?
ふっふっふ、もちろんれいかちゃんにだけだからね。

可愛いことを言ってくれる妹にキュンとしながらも、頭にちらつく留学という言葉に胃が痛くなりそうで辛いです。

ねぇねぇ、おかえりなさいのチューは?
手洗いうがいをしてからね。
はーい、早く早く〜
急かされながら洗面所に向かい、手洗いうがいをする最中も、わたしの背中に抱きついて離れない妹が愛しくてたまりません。

みゆき、キスしますね。
はーい。
しばらくみゆきの柔らかい唇を堪能してから、それじゃあ着替えてくるわねと言うと、じゃあ先にダイニング行っとくね〜と一旦離れていきました。



部屋で着替えを済ませて、ダイニングに入るとお父様以外はもう席についていたので、わたしも自分の定位置に座りました。
お父さんは少し遅くなるから、先に食べときましょうか。
お祖父様がそうじゃな、ご飯が冷めないうちに食べるほうがよいな。と言ったので青木家の食事が始まりました。


わたしは留学の話題を食卓で出していいものかどうか迷いましたが、家族にはきちんと言わなければならないと思い、思いきって切り出しました。

あの、少しよろしいですか?
お母様に目線を向けて話しかけました。
あら、何かしら?

あの、ですね…わたしの留学が決まったと先生から報告がありましたので、お伝えしておこうと思いました。
まぁ!本当ですか?!よかったわね、れいか。
お〜留学とは立派じゃな、れいか、おめでとう。
れいか!すごいじゃないか‼おめでとう。
…りゅ…りゅうがく・・・ぁ、お…おめでとうお姉ちゃん…


家族のそれぞれの反応に苦笑いでありがとうございますと何とか返事をしました。
先生から中学に入学後、れいかに留学させたらどうかという話があったの、それでチャンスがあれば是非と先生とずっとお話をしてきたのよ。
生徒会長という事と成績面でも学年トップの優秀生だから、今回学校から推薦を頂いたんですよ。
わたしは母の話を聞く余裕が全く無くなっていました。


俯いてご飯を食べているみゆきを見て、わたしの中で最も重要なことに気がつきましたよ!

わたしが留学したらみゆきがなおにペロッと食べられてしまうのではないでしょうか!?もしくはお兄様が手を出してしまう…そんなことは絶対に許せません!駄目です!可愛いわたしの大事な大切な愛しいみゆきを置いていくのは非常に危険すぎます。


おかあさま、わたしは一言申し上げたいのですがぁ!!!
突然大声を上げて立ち上がったわたしに家族全員が驚いて何故か分かりませんが、一斉に笑い声が上がりました。
ちょっとれいか、どうしたの突然…ふっふふふ、もう笑わせないで。
れいかが豹変するとは可笑しいのう、はっはっはー。
れいか、くっはっははは‼いきなりそれは、笑えるじゃないか。
ふふっお姉ちゃんって面白いよね〜

立ち上がったわたしを見上げながら笑い声が止まらないこの状況に急に恥ずかしさでいっぱいになり、椅子に座り直して、みゆきの愛情たっぷりのハンバーグを食べてから、これは素晴らしいわ!と感嘆の声をあげると、また家族が震えながら笑い始めたので、自分でも可笑しくて笑い始めてしまいました。


続きます。