紫陽花と貴女と

妹が留学してから五ヶ月くらい経っただろうか。
学校からの帰り道も一人ということにようやく慣れてきた。
時々親友のあのメンバー達と一緒に帰ることもあるが、みんな部活などで忙しいのとが大半で、自分もその忙しいうちの一人だった。

春は桜が綺麗に咲く桜並木を通りながら、貴女は異国の地で元気に頑張っているだろうかと思いを馳せた。
梅雨になった今は紫陽花が雨粒を揺らして静かに咲いている。


紫陽花は私たちの花みたいだと言っていたのをふと思い出した。
ブルーとピンクがキラキラと輝いて、幸せそうに咲いている様子を、貴女は瞳を輝かせながら見ていた。


お家に帰ったらいつものように教科書を開き宿題を終わらせる。
今年は受験の年なので、晩は受験勉強に勤しむ。
でも時々、貴女がいないこの空間に一人でいることが苦しくなって、夜の散歩に出かけたりしている。
もちろん家族が心配しないように、息抜き程度に御近所を歩くだけにとどまる。

親友の一人のあかねが、受験勉強で息が詰まりそうになったらうちの店のお好み焼きを食べにきたらええで!と言っていたから、時々お邪魔させてもらっている。

受験する高校は決めたのか?とか、妹とは連絡を取ってるのか?とか、向こうで浮気してたらどうする?というような質問をしてくるが、特に動揺する様子もなく淡々と返しておしまいだ。
素っ気ないとブーブー文句を言われるのはいつものことで慣れていた。
もちろん受験する高校に関しては妹と同じところを受けることは教えている。


パソコンのカメラを通して画面越しに時々お話はするが、向こうとこちらでは昼夜逆転しているため、必ず毎回どちらかが眠たそうな顔をしている。
眠たそうな顔をしているわたしを見て可愛い、抱き締めて寝たいという妹に苦笑い気味に自分も同じ気持ちだと答えていた。

あと数ヶ月したらまた普段どうりの生活に戻る。
貴女が当たり前のように隣に寄り添っていた時間は、とても大切で優しいひと時だったんだと、離れてから身に沁みてよくわかった。

わたしには貴女が必要だ、だからわたしも貴女の隣に胸を張って立てるような存在でいられるように、一日一日を頑張って過ごしている。


今日は雨が降る帰り道、紫陽花が水の恵みを受けて元気に揺れている。
水の妖精という言葉がよく似合っているなと思ったのは、自分だけの胸にとどめておこう。


おしまい。